応用数学 第5回 (2) 定数係数2階同次線形微分方程式
定数係数2階同次線形微分方程式
2階同次線形微分方程式は、係数が定数の場合
$$
y'' + a \, y' + b \, y = 0
\tag{8.2}
$$
には2次方程式を解くだけでカンタンに一般解が書けます。
Def.1 2次方程式
$$
s^2 + a \,s + b = 0
\tag{8.3}
$$
を $(8.2)$ の特性方程式と言い、その根を特性根と言う。
Th.2 $(8.2)$ の一般解 $Y$ は特性根を用いて次のように書ける:
- 特性根が異なる2つの実数 $\alpha$, $\beta$ のとき $Y=Ae^{\alpha x}+Be^{\beta x}$.
- 特性根 $\alpha$ が重根のとき $y=(Ax+B)e^{\alpha x}$.
- 特性根が共役な複素数 $\lambda\pm i\mu$ のとき $Y=e^{\lambda x}(A\sin(\mu x)+B\cos(\mu x))$.
証明 前回の Th.8 より、一次独立な解を2つみつければ宜しい。
-
$e^{\alpha x}$ が $(8.2)$ の解であることは
\begin{align}
(e^{\alpha x})''+a\,(e^{\alpha x})'+b\,(e^{\alpha x})
&=(\alpha^2\,e^{\alpha x})+ a\,(\alpha\,e^{\alpha x})+b\,(e^{\alpha x})\\
&=(\alpha^2+a\,\alpha+b)(e^{\alpha x})=0 \\
\end{align}
より。$e^{\beta x}$ も同様です。
$e^{\alpha x}$ と $e^{\beta x}$ が一次独立であることは、
直接示しても簡単ですし、
前回の Ex.3, Th.4 からもわかります。
- $\alpha$ が重根ならば $a = -2\alpha$ ゆえ
\begin{align}
(xe^{\alpha x})''&+a\,(xe^{\alpha x})'+b\,(e^{\alpha x}) \\
&=(2\alpha\,e^{\alpha x}+\alpha^2\,x\,e^{\alpha x})+a\,(e^{\alpha x}+\alpha\,x\,e^{\alpha x})+b\,(e^{\alpha x})\\
&=(2\alpha+a)(e^{\alpha x})+(\alpha^2+a\,\alpha+b)(e^{\alpha x})=0 \\
\end{align}
$e^{\alpha x}$ と $xe^{\alpha x}$ が一次独立であることも簡単に示せます。
- (1) とは実数か複素数かが違うだけで、$e^{(\lambda+i\mu)x}$, $e^{(\lambda-i\mu)x}$ は2つの一次独立な解です。
オイラーの公式より
$e^{(\lambda+i\mu)x}=e^{\lambda x}(\cos(\mu x) \pm i\, \sin(\mu x))$
... $i$ が抜けていたのを訂正しました。11/5, 9:50am
ですから、$e^{\lambda x}\sin(\mu x)$, $e^{\lambda x}\cos(\mu x))$ も2つの一次独立な解になります。
(証明終)
Ex.3
前回の「鉛直ばね振り子」の微分方程式
$\dps{X''+\frac{R}{m}X'+\frac{k}{m}X=0}$
は、
特性根が共役な複素数 $\lambda\pm i\mu$ ( $\lambda \lt 0$ ) の場合で、三角関数の合成により
$\dps{X(t)=C\,e^{\lambda x}\sin(\mu t + \nu)}$
と書けますから
のような運動をします。
やってみよう 次の2階線形微分方程式の一般解を求めよ。
(1) $y''+y'-2y=0$ (2) $y''+2y'+y=0$ (3) $y''-4y'+5y=0$
解
- 特性方程式:$s^2+s-2=0$, 特性根 $=1$, $-2$ より $y=Ae^x+Be^{-2x}$
- 特性方程式:$s^2+2s+1=0$, 特性根 $=-1$ (重根) より $y=(Ax+B)e^{-x}$
- 特性方程式:$s^2-4s+5=0$, 特性根 $=2\pm i$ より $y=e^{2x}(A\sin x +B\cos x)$
定数係数 $n$ 階同次線形微分方程式の場合
一般に
$$
y^{(n)}+a_1(x)\,y^{(n-1)}+\cdots +a_n(x)\,y=0
\tag{$\ast$}
$$
についても、特性方程式
$s^n+a_1\,s^{n-1}+\cdots +a_n=0$
を考えます。特性根 $\alpha$ が $m$ 重根のときに $m$ 個の関数
$e^{\alpha x}$, $x\,e^{\alpha x}$, $\cdots\ $ , $x^{m-1}\,e^{\alpha x}$
が $(\ast)$ の解となり、
全ての特性根についてこのような関数を書き出すと $(\ast)$ の解空間の基底が得られます。