応用数学 第5回 (4) 未定係数法 その2

未定係数法がそのままでは上手くいかない例

Ex.6 ( 例 8.2 (2) ) $y'' + y' -6 y = e^{2x} + x^2 - x$
 今度は、右辺の $e^{2x}$, $x^2$, $x$ を何度か微分して得られる関数が生成するベクトル空間は
$e^{2x}$, $x^2$, $x$, $1$
を基底とする4次元です。ところが
$y=a e^{2x} + b x^2 + c x + d$
の形で解を求めようとしても上手くいきません。 何故かと言うと、$e^{2x}$ は補助方程式
$y''+y'-6y=0$
の解ですから、$y$ を左辺に入れると $ae^{2x}$ の項の寄与が無くなり
$y=b x^2 + c x + d$
の形の解を探していることと同じになってしまいます。 多項式関数から $e^{2x}$ は作れないので失敗に終わる、という訳です。

解決策

Technique  このように、右辺の項に補助方程式の解 $e^{\alpha x}$ が入っているときは、 特性根 $\alpha$ の重複度を $m$ として $x^me^{\alpha x}$ を $e^{\alpha x}$ の代わりに使うと上手くいきます。 ( 理由は、のちにやる「演算子法」で明らかになります。 )
 Ex.6 で実践してみましょう。
$y=a xe^{2x} + b x^2 + c x + d$
とおくと
$\dps{ \left\{ \begin{array}{l} y'= a (2x+1)e^{2x} + 2b x + c\\ y''= a (4x+4)e^{2x} + 2b\\ \end{array} \right. }$
これらを元の方程式に入れて
$(a (4x+4)e^{2x} + 2b)+(a (2x+1)e^{2x} + 2b x + c) - 6 (a xe^{2x} + b x^2 + c x + d)$
$=e^{2x} + x^2 - x$
∴ $5a e^{2x} -6b x^2 +(2b-6c)x +(2b + c-6d) = e^{2x} + x^2 - x$
∴ $\dps{a= \frac{1}{5}}$,   $\dps{b= -\frac{1}{6}}$,   $\dps{c= \frac{1}{9}}$,   $\dps{d= -\frac{1}{27}}$
従って、特殊解として
$\dps{y_0= \frac{1}{5}xe^{2x} -\frac{1}{6}x^2 + \frac{1}{9}x -\frac{1}{27}}$
が得られました。Th.2 と合わせると、 一般解 $y$ は
$\dps{y= \frac{1}{5}xe^{2x} -\frac{1}{6}x^2 + \frac{1}{9}x -\frac{1}{27}}+A\,e^{2x} + B\, e^{-3x}$
となります。