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数値解析 第15回 (2) 2次の実対称行列の対角化

転置行列

 前回も出てきましたが
Def.3 行列 A=(aij) に対し、aij(j,i)-成分とする行列を「 A の転置行列」と言い、 tA と表す。
 たとえば
(t(12)=(1  2),  (t(1234)=(1324)
であり、Am×n 行列ならば tAn×m 行列になります。 また、t の記号は「t 乗」と間違わないように左肩に書く人が多いです。 もちろん t(tA)=A が成り立ちます。
Prop.4 積の転置は、転置を逆順に掛けたものになる:
t(AB)=(tB)(tA),  t(Av)=(tv)(tA)  etc.
Rem.5 角 θ の回転の行列 R(θ) の逆行列は、 角 θ の回転の行列 R(θ) であり、 tR(θ) でもある。
R(θ)1=R(θ)=tR(θ).
  逆向きに回せば元に戻るので R(θ)1=R(θ) であり、
R(θ)=(cos(θ)sin(θ)sin(θ)cos(θ))=(cosθsinθsinθcosθ)=tR(θ).

実対称行列

Def.6 tA=A を満たす正方行列を 対称行列 と呼び、 特に実数成分の対称行列を 実対称行列 と呼ぶ。
 対角成分たちを対称軸にして、成分が対称になっている、という意味です。 2次、3次ではそれぞれ次のような行列です。 (abbc),(abcbdecef)

2次の実対称行列の対角化

Th.7 A=(abbc) を2次の実対称行列とする。角 θ
θ={12arctan(2bac) ifacπ4 ifa=c
と選べば、R(θ) によって A を対角化することができる:
R(θ)1AR(θ)=(λ00μ),   λ, μ
証明 角 θ の回転の逆変換は角 θ の回転ゆえ R(θ)1=R(θ) ですから、 R(θ)1AR(θ)=R(θ)AR(θ)=(cosθsinθsinθcosθ)(abbc)(cosθsinθsinθcosθ)=(cosθsinθsinθcosθ)(acosθ+bsinθasinθ+bcosθbcosθ+csinθbsinθ+ccosθ)=(acos2θ+2bsinθcosθ+csin2θ(a+c)sinθcosθ+b(cos2θsin2θ)(a+c)sinθcosθ+b(cos2θsin2θ)asin2θ2bsinθcosθ+ccos2θ). すると、この (1,2)-成分 ( = (2,1)-成分 ) は (a+c)sinθcosθ+b(cos2θsin2θ)=12(ac)sin(2θ)+bcos(2θ)={12(ac)cos(2θ)(tan(2θ)2bac)=0 ifac,bcos(π2)=0 ifa=c となります。(証明終)
Ex.8 A=(4332) のとき、
θ=12arctan(2×331)=12arctan(3)=π6
を用いて
R(π6)1(4332)R(π6)=(5001)