数値解析 第15回 (1) 回転の行列
回転の行列
Def.1 角 $\theta$ に対し、次の2次正方行列を 回転の行列 と呼ぶ:
$R(\theta)= \mat{rr}{\cos\theta & -\sin\theta \\ \sin\theta & \cos\theta }$
なぜ回転の行列と呼ぶかというと
Th.2 一次変換
$\mat{c}{x' \\ y'}
= R(\theta) \mat{c}{x \\ y}
= \mat{c}{\cos\theta\times x - \sin\theta\times y \\ \sin\theta\times x + \cos\theta\times y}$
によって、$xy$-平面上の図形は原点中心に反時計回りに角 $\theta$ 回転させた図形に写る。
$\longrightarrow$
補足
※ 三角関数の加法公式は回転の行列で
角 $\beta$ の回転と角 $\alpha$ の回転を続けて行うと角 $\alpha+\beta$ の回転になりますので
$R(\alpha+\beta) = R(\alpha)\,R(\beta).$
\begin{align}
\therefore
&\mat{rr}{\cos(\alpha+\beta) & -\sin(\alpha+\beta) \\ \sin(\alpha+\beta) & \cos(\alpha+\beta) }\\
& =
\mat{rr}{\cos\alpha & -\sin\alpha \\ \sin\alpha & \cos\alpha }
\mat{rr}{\cos\beta & -\sin\beta \\ \sin\beta & \cos\beta }\\
& =
\mat{rr}{\cos\alpha\cos\beta-\sin\alpha\sin\beta & -\cos\alpha\sin\beta-\sin\alpha\cos\beta \\
\sin\alpha\cos\beta + \cos\alpha\sin\beta & -\sin\alpha\sin\beta+\cos\alpha\cos\beta }.
\end{align}
※ Th.2 の証明のおさらい
- 角 $\theta$ の回転では、
- 2つのベクトルは足してから回しても、回してから足しても、結果は同じ
- ベクトルはスカラー倍してから回しても、回してからスカラー倍しても、結果は同じ
です。
- すなわち、
原点中心の反時計回りの角 $\theta$ の回転を $f$ と表すと、
任意のベクトル $\vvv$, $\www$ と、任意のスカラー $\alpha$ に対して
$f(\vvv+\www)=f(\vvv)+f(\www), f(\alpha\vvv)=\alpha f(\vvv)$
が成り立ちます ( これを、$f$ は線形写像である、と言います ) 。
- 標準基底ベクトルを角 $\theta$ 回転させた像は
$\dps{f \mat{c}{1 \\ 0} = \mat{r}{\cos\theta \\ \sin\theta}}$,
$\dps{f \mat{c}{0 \\ 1} = \mat{r}{-\sin\theta \\ \cos\theta}}$
ですから
\begin{align}
f\mat{c}{x \\ y}
&= f\left(x \mat{c}{1 \\ 0} + y \mat{c}{0 \\ 1}\right) \\
&= x f\mat{c}{1 \\ 0} + y f\mat{c}{0 \\ 1} \\
&= x \mat{r}{\cos\theta \\ \sin\theta} + y \mat{r}{-\sin\theta \\ \cos\theta}
= \mat{rr}{\cos\theta & -\sin\theta \\ \sin\theta & \cos\theta } \mat{c}{x \\ y}
\end{align}
となります。
※ Th.2 の証明を複素平面で考える
複素平面の極座標を使って
$x+iy = re^{i\alpha}=r(\cos\alpha+i\sin\alpha)$
と書いておくと、
$x+iy$ を反時計回りに角 $\beta$ 回転させた点 $x'+iy'$ は $re^{i(\alpha+\theta)}$ になりますので
\begin{align}
x'+iy' &= re^{i(\alpha+\theta)} \\
&= e^{i\theta}re^{i\alpha} \\
&= (\cos\theta+i\sin\theta)(x+iy) \\
&= \big(\cos\theta\times x - \sin\theta\times y \big)
+ i \big(\sin\theta\times x + \cos\theta\times y \big). \\
\therefore
x' &= \cos\theta\times x - \sin\theta\times y, \\
y' &= \sin\theta\times x + \cos\theta\times y. \\
\end{align}