組合せとグラフの理論(塩田)第11回 (2) 基本的命題
基本的命題
基本的な性質を命題としてまとめていきましょう。
Prop.5
- $\chi(G)=1$ であることと、$G$ が空グラフであることは同値である。
- $\chi(G)=2$ であることと、$G$ が空でない二部グラフであることは同値である。
- $T$ が 2 頂点以上の木であれば $\chi(T)=2$ である。
- $\chi(K_n) = n$.
- $n \geqq 3$ に対して
$\dps{\chi(C_n)=\left\{
\begin{array}{ll}
2 & n \mbox{ が偶数のとき} \\
3 & n \mbox{ が奇数のとき.} \\
\end{array}
\right.}$
証明
- $G$ が空グラフであれば隣接関係が全くないので $\chi(G)=1$ です。
辺が 1 本でもあればその両端に違う色を使う必要があるので $\chi(G) \geqq 2$ になります。
- $G$ は空でないので $\chi(G) \geqq 2$ であり、次のように 2 色で点彩色できます。
- 木は二部グラフゆえ。
- 完全グラフは全ての頂点が互いに隣接していますので、全ての頂点に違う色を使う必要があります。
- Ex.4 のように、$n$ が偶数なら互い違いに塗ればよく、$n$ が奇数なら 3 色目が必要になります。
(証明終)
部分グラフとの関係
Prop.6 $H$ をグラフ $G$ の部分グラフとすると
$\chi(H)$
$\chi(G)$.
... には $\leqq$ と $\geqq$ のどちらが入るでしょうか。
Prop.6 $H$ をグラフ $G$ の部分グラフとすると
$\chi(H) \leqq \chi(G)$.
証明
$G$ を $\chi(G)$ 個の色で点彩色しておきます。
そこからいくつかの頂点と辺を除去すれば $H$ が得られますが、
このとき $H$ の彩色条件もみたされているので、$H$ は $\chi(G)$ 色で点彩色可能です。
点彩色可能な色数の最小値が $\chi(H)$ なので $\chi(H) \leqq \chi(G)$ です。(証明終)
平面性の問題では部分グラフの方が描き易かったのと同様、
部分グラフの方が束縛条件が少ないので色が塗り易い、ということです。
Prop.7 $G$ が部分グラフとして $K_n$ を含んでいれば $\chi(G) \geqq n$.
Ex.8 一筆書きでよく使うこのグラフは
$K_4$ を部分グラフとして含んでいますので彩色数は 4 以上で ( 1° )、
実際に次のように 4 色で点彩色できます ( 2° )。
この例のように
Prop.7 は
彩色数の示し方 の 1° に役立つのですが、
残念なことに逆が成り立ちません。
Rem.9 $\chi(G)=n$ であっても $G$ が $K_n$ を含むとは言えない。
従って、$G$ の含む完全グラフを調べても $\chi(G)$ は決められません。
ここもとても大事!!
次の節では
Rem.9 のような $G$ を作って見せます。