応用数学 第8回 (1) 整級数の基礎知識 ( テキスト4章§8 )

整級数

 $x$ の整級数とは \begin{align} y(x) = c_0 + c_1\, x + c_2\, x^2 + \cdots = \dps{\sum_{n=0}^{\infty} c_n\, x^n} \tag{$\ast$} \\ \end{align} の形の関数のことです。これについて次の定理が成り立ちます。
Th.1
  1. 収束半径 と呼ばれる数 $r$ ( $r \geqq 0$ ) が存在して、
    • $|\,x\,| \lt r$ のとき $y(x)$ は収束し、
    • $|\,x\,| \gt r$ のとき $y(x)$ は発散する。
  2. $r$ の公式としては次のふたつがよく使われる:
    1. $\dps{\frac{1}{r}=\lim_{n\rightarrow \infty} \left|\,\frac{c_{n+1}}{c_n}\,\right|}$
    2. $\dps{\frac{1}{r}=\lim_{n\rightarrow \infty} \sqrt[n]{c_n}}$
    ( 正確には $\lim$ と言うより $\limsup$ )
  3. 収束域 $|\,x\,| \lt r$ においては $y(x)$ は 項別微分 ができる:
    $y'(x) = c_1 + 2\,c_2\, x + 3\,c_3\, x^2 + \cdots = \dps{\sum_{n=1}^{\infty} n\, c_n\, x^{n-1}}$
  4. $y'(x)$ の収束半径も $r$ になる。
  5. $y(x)$ は収束域 $|\,x\,| \lt r$ において任意回数微分可能で
    $y^{(N)}(x) = \dps{\sum_{n=N}^{\infty} n(n-1)\cdots(n-N+1)\, c_n\, x^{n-N}}$
  6. $\dps{c_n = \frac{1}{n!}\,y^{(n)}(0)}$

$\dps{y(x) = 1 + \frac{1}{1!}\, x + \frac{1}{2!}\, x^2 + \frac{1}{3!}\,x^3 + \cdots = \sum_{n=0}^{\infty} \frac{1}{n!}\, x^n}$
の収束半径 $r$ は 2.(i) より
$\dps{\frac{1}{r} =\lim_{n\rightarrow \infty} \left|\,\frac{\frac{1}{(n+1)!}}{\frac{1}{n!}}\,\right|} =\lim_{n\rightarrow \infty} \frac{n!}{(n+1)!} =\lim_{n\rightarrow \infty}\frac{1}{n+1}= 0.$
従って $r=+\infty$. すなわち全ての $x$ でこの整級数は収束して項別微分可能で、 \begin{align} y'(x) &= \dps{0 + \frac{1}{1!}\, 1 + \frac{1}{2!}\, 2x + \frac{1}{3!}\,3x^2 + \cdots } \\ & = \dps{\phantom{0000} 1 \phantom{0x} + \frac{1}{1!}\, x \phantom{x} + \frac{1}{2!}\, x^2 \phantom{x} + \cdots = y(x)} \\ \end{align} しかも  $y(0)=1$  を満たすことからこの関数は  $e^x$  であることがわかります。