応用数学 第2回 (3) 完全微分形方程式
全微分方程式
Def.5
P(x,y)dx+Q(x,y)dy=0
と書ける微分方程式を「全微分方程式」と呼ぶ。
1階常微分方程式は
(5.1) の形に直せることが多いです。例えば
- dydx=ytanx なら
(tanx)dx+(−1y)dy=0
と書けます。
-
(y′)2+2y′+xy=0 なら
y′=−1±√1−xy と解いて
(1∓√1−xy)dx+(1)dy=0
と書けます。
完全微分形方程式
Def.6 (5.1) が完全微分形 ( 完全形 ) である、とは、
ある2変数関数 f(x,y) があって
左辺 P(x,y)dx+Q(x,y)dy=df(x,y)
となること。
df は正確に言うと「微分1形式」という代物ですが、記号として
df=∂f∂xdx+∂f∂ydy
と書くもの、と思っていれば計算できます。
Th.7 Def.6 のとき、 (5.1) の一般解は
f(x,y)=C
証明 dfdx=(P+Qdydx)=0 ゆえ
f=∫0dx=C.
(証明終)
Th.8 (5.1) が完全微分形であることは
∂P∂y=∂Q∂x
と同値。
証明 ⇒ )
df=Pdx+Qdy であれば
P=∂f∂x,
Q=∂f∂y ゆえ
∂P∂y=∂2f∂y∂x=∂2f∂x∂y=∂Q∂x.
⇐ ) まず、
g(x,y)=∫P(x,y)dx
とおきます。ただし右辺は
y を定数と思って
x で積分したものです。このとき
∂g∂x=P
ですから
(5.2) を用いると、
∂∂x(Q−∂g∂y)=∂Q∂x−∂2g∂y∂x=∂Q∂x−∂P∂y=0
従って
Q−∂g∂y は
x に依らない
y だけの関数です。そこで
h(y)=Q−∂g∂y,
f(x,y)=g(x,y)+∫h(y)dy
とおくと
df=dg+h(y)dy=∂g∂xdx+∂g∂ydy+(Q−∂g∂y)dy=Pdx+Qdy.
(証明終)
この証明から
Cor.9 (5.1) が完全微分形であるとき、その一般解は
f(x,y)=∫Pdx+∫(Q−∂∂y∫Pdx)dy=C.