数値解析 第13回 (4) 固有多項式 ( 特性多項式 )
固有多項式の定義
Def.12 $n$ 次正方行列 $A$ に対し
$\varphi_A(x)=|\,xE-a\,|=\det(xE-A)$
で定まる $n$ 次多項式を「$A$ の固有多項式 ( あるいは特性多項式 ) 」と呼ぶ。
- Ex.5 の行列 $\dps{A=\mat{rr}{-3 & 0 \\ 0 & 2}}$ の場合:
$\dps{\varphi_A(x)
=\det\left(\mat{cc}{x & 0 \\ 0 & x }-\mat{rr}{-3 & 0 \\ 0 & 2}\right)
=\left|\,\begin{array}{cc}x+3 & 0 \\ 0 & x-2 \end{array}\,\right|
=(x+3)(x-2).
}$
- Ex.6 の行列 $\dps{A=\mat{rr}{3 & 1 \\ 1 & 3}}$ の場合:
$\dps{\varphi_A(x)
=\left|\,\begin{array}{cc}x-3 & -1 \\ -1 & x-3 \end{array}\,\right|
=(x-3)^2-(-1)^2=(x-4)(x-2).
}$
Rem.13 $A=(a_{ij})$ が対角行列、上三角行列、下三角行列ならば
$\dps{\varphi_A(x)=\prod_{i=1}^n \,(x-a_{ii})}.$
$\because$ 対角行列、上三角行列、下三角行列の行列式は対角成分の積ゆえ。
固有多項式と固有値
Th.14 $\lambda$ が $A$ の固有値であること $\Leftrightarrow$ $\varphi_A(\lambda)=0$.
証明
$A\vvv=\lambda\vvv$ が $\vvv\neq\ooo$ を満たす解 $\vvv$ を持つこと
$\Leftrightarrow$
$(\lambda E - A)\,\vvv=\ooo$ が $\vvv\neq\ooo$ を満たす解 $\vvv$ を持つこと
$\Leftrightarrow$
$\det(\lambda E - A) = 0.$
(証明終)
※ 特に、$\lambda$ に対する固有ベクトル $\vvv$ は $(\lambda E - A)\,\vvv=\ooo$ の非零解です。
Cor.15 $0$ が $A$ の固有値であること $\Leftrightarrow$ $\det(A)=0$ $\Leftrightarrow$ $A^{-1}$ 存在しないこと。
証明
$\varphi_A(0)=\det(0E-A) = (-1)^n \det(A)$ ゆえ。(証明終)