数値解析 第10回 (2) 状況設定

連立一次方程式の行列を用いた表記

 例えば
Ex.4 連立一次方程式   $\dps{\left\{ \begin{array}{l} \phantom{xxxx}\phantom{1}y - \phantom{1}z = -1 \\ 2x -6y + 4z = \phantom{w}2 \\ 3x + \phantom{1}y - \phantom{1}z = \phantom{w}2 \\ \end{array} \right.}$
を考えましょう。これは、行列 $A$、未知数のベクトル $\xxx$、ベクトル $\bbb$ を
$A= \dps{ \mat{rrr}{ 0 & 1 & -1 \\ 2 & -6 & 4 \\ 3 & 1 & -1} }$,   $\xxx=\dps{\mat{c}{x \\ y \\ z}}$,   $\bbb=\dps{\mat{r}{-1 \\ 2 \\ 2}}$
とおくと、簡単に
$A\xxx=\bbb$
と書き表すことができます。
Def.5 $m \times n$-行列 $A$、 未知の $n$ 次元縦ベクトル $\xxx$、 $m$次元縦ベクトル $\bbb$ を用いて
$A\xxx=\bbb$
と表される連立一次方程式において、$A$ をその「係数行列」と言い、 また $A$ の右側に $\bbb$ を書き加えた $m \times (n+1)$-行列 $(A\ \bbb)$ を「拡大係数行列」と呼ぶ。
 Ex.4 では拡大係数行列は
$(A\ \bbb)= \dps{ \mat{rrrr}{ 0 & 1 & -1 & -1\\ 2 & -6 & 4 & 2 \\ 3 & 1 & -1 & 2 \\} }$
です。

状況設定

 今日から 3 回にわたり
  • $A=(a_{ij})$:与えられた $n$ 次正則行列
  • $\xxx=(x_i)$:未知の $n$ 次元縦ベクトル
  • $\bbb=(b_i)$:与えられた $n$ 次元縦ベクトル
を用いて
$A\xxx=\bbb$
と表される連立一次方程式の解 $\xxx$ の近似値を求めます。 $A$ は正則ですから理論的には
$\xxx=A^{-1}\bbb$
ですが、それをどうやって計算するか
、というお話です。

方針のいろいろ

 この講義では以下の方法を学びます。
  1. 直接、$\xxx=$ 何々、という式を導く方法
    • ガウスの消去法
    • LU分解法
  2. 反復法により $\xxx$ に収束するベクトル列を計算する方法
    • ヤコビ法
    • ガウス・ザイデル法
今日はガウスの消去法、次回はLU分解法、その次にふたつの反復法をやります。