数値解析 第9回 (4) 偏微分方程式
偏微分方程式の例
物理現象を表す偏微分方程式の例をいくつか見ておきましょう。
ポアソン方程式
$\dps{\frac{\partial^2 u}{\partial x^2}+\frac{\partial^2 u}{\partial y^2}+\frac{\partial^2 u}{\partial z^2}=f(x, y, z)}$
- $u$ は ( 例えば ) 位置 $(x, y, z)$ の静電ポテンシャルを表す関数で、
- $f(x,y,z)$ は電荷の分布を表す関数です。
熱伝導方程式
$\dps{\frac{\partial u}{\partial t}=\frac{\partial^2 u}{\partial x^2}+\frac{\partial^2 u}{\partial y^2}}$
- $u$ は、時刻 $t$, 位置 $(x,y)$ における温度を表す関数です。
- 拡散方程式とも呼ばれます。
波動方程式
$\dps{\frac{\partial^2 u}{\partial t^2}=\frac{\partial^2 u}{\partial x^2}+\frac{\partial^2 u}{\partial y^2}}$
- $u$ は、時刻 $t$, 位置 $(x,y)$ における波の変位を表す関数です。
ラプラス方程式
$\dps{\frac{\partial^2 u}{\partial x^2}+\frac{\partial^2 u}{\partial y^2}=0,\quad
\frac{\partial^2 u}{\partial x^2}+\frac{\partial^2 u}{\partial y^2}+\frac{\partial^2 u}{\partial z^2}=0}$
- 電荷が存在しない場合の静電ポテンシャルや、熱分布の定常状態などを表します。
- ポアソン方程式、熱伝導方程式などの部分問題でもあります。
偏微分方程式の数値解法
2 変数関数 $u=u(x,y)$ についてのラプラス方程式
$\dps{\frac{\partial^2 u}{\partial x^2}+\frac{\partial^2 u}{\partial y^2}=0}$
$\cdots\cdots$ $(1)$
で説明します。
- $x$, $y$ の刻み幅 $h = \mathit{\Delta}x = \mathit{\Delta}y$ を設定する。
- $xy$-平面に幅 $h$ で格子を描く:
- 格子点での $u$ の値を $u_{ij}=u(x_i,y_j)$ とおく。
- $u_{ij}$ は図の ● では境界条件として与えられていて、○ では未知数である。
- $\dps{\frac{\partial^2 u}{\partial x^2}}$ は $y$ を定数と思って $x$ で 2 回微分することなので、
中心差分を用いると
$\dps{\frac{\partial^2 u}{\partial x^2}(x_i,y_j)
\mbox{ ≒ } \frac{1}{h^2}\left(u(x_i+h,y_j)-2u(x_i,y_j)+u(x_i-h,y_j)\right)}$
3° の記号で
$\dps{\frac{\partial^2 u}{\partial x^2}(x_i,y_j)
\mbox{ ≒ } \frac{1}{h^2}\left(u_{i+1,j}-2u_{ij}+u_{i-1,j}\right)}$
$\cdots\cdots$ $(2)$
同様に
$\dps{\frac{\partial^2 u}{\partial y^2}(x_i,y_j)
\mbox{ ≒ } \frac{1}{h^2}\left(u_{i,j+1}-2u_{ij}+u_{i,j-1}\right)}$
$\cdots\cdots$ $(3)$
- $(2)$, $(3)$ を $(1)$ に入れて、≒ を思い切って $=$ と書くと
$u_{i+1,j}+u_{i-1,j}+u_{i+1,j}+u_{i-1,j}-4u_{ij}=0$ $\cdots\cdots$ $(\ast)$
これを全ての ○ の番号 $(i,j)$ について書き出すと、未知数 $u_{ij}$ たちの連立一次方程式が得られ、
それを行列計算によって解く。
たとえば $10\times 10$ の格子を描くと ○ は 81 個あるので、
未知数が 81 個の連立一次方程式を解くことになります。
ということで、次回から線形代数編に入ります。
※ $(\ast)$ の式は
第5回 Rem.12 のラプラシアンフィルタで一度紹介したものです。