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数値解析 第7回 (2) ルジャンドル多項式 Pn(x)

ルジャンドル多項式の定義

 ガウスの積分公式はルジャンドル多項式の性質に基づいて設計されています。
Def.1 ルジャンドル多項式 Pn(x) とは次式で決まる n 次式である:
Pn(x)=12n×n!(ddx)n(x21)n   (n=0,1,)
Ex.2 n=0,1,2 のときは P0(x)=120×0!(x21)0=11×11=1P1(x)=121×1!(x21)=12×1(2x)=xP2(x)=122×2!{(x21)2}=14×2(x42x2+1)=12(3x21)

ルジャンドル多項式の性質

 証明は省略しますが、基本的な定理を3つ挙げます。
Th.3  ルジャンドル多項式は次の漸化式から計算できる
P0(x)=1,  P1(x)=x,
Pn(x)=1n{(2n1)xPn1(x)(n1)Pn2(x)}   (n=2,3,)
Th.4 Pn(1)=1,   Pn(1)=(1)n.
Th.5 内積 f,g=11fgdx に関して次が成り立つ:
  1. mn ならば Pm,Pn=0.
  2. Pn,Pn=12n+1.
 Th.5 の式は、関数をベクトルと考える とき、
  1. Pn たちは 互いに直交 していて、
  2. Pn の長さは12n+1 である
ことを意味しています。(1) の意味で「 Pn たちは直交関数系を成す」と言います。 言わば、こんなイメージです:
Cor.6 k<m ならば Pm,xk=0.
証明 Pnn 次式なので、xk
P0P1P2, Pk
の一次結合として書けることが帰納法で示せます:
xk=kn=0cnPn,   cn    ( たとえば x2=13P0+23P2 )
よって Th.5 (1) と、内積の線形性より
Pm,xk=Pm,kn=0cnPn=kn=0cnPm,Pn=0.
(証明終)

ルジャンドル多項式の由来、他

Rem.7 電磁気学、熱力学、流体力学などで活躍する 3 次元のラプラス方程式を変数変換すると、 パラメータ n の入ったルジャンドルの微分方程式というものが出てきます:
(1x2)y2xy+n(n+1)y=0
これは 2 階線形微分方程式なのでその解空間は 2 次元のベクトル空間になりますが、 その基底として、多項式の解と、無限級数の解を取ることができます。 その多項式解がルジャンドル多項式 Pn です。 ( 「応用数学」2021年度第8回の教材 参照 )

※ 役に立つ関数は得てして、物理学などの、数学以外の分野に由来するという例です。

Rem.8 一次独立な n 個のベクトル
v1v2, vn
から、直交する n 個の単位ベクトルを作り出す「グラム・シュミットの直交化法」というアルゴリズムがあります。 関数列
1x, xn
にこのアルゴリズムを適用するとルジャンドル多項式
P0P1, Pn
が ( 定数倍を除いて ) 得られます。