数値解析 第2回 (2) 未来予測の例

自由落下

 未来予測の例をふたつほど紹介しましょう。

 地球の表面付近で物体に何も力を加えずに落下させると、 掛かる力 $f$ は重力のみ
$f=-mg$  ( ただし $g$ は重力加速度 $=9.80665$ $m/s^2$ )
です。これを運動方程式 $(\ast)$ へ入れると
$a=-g$
時刻 $t$ で積分して
$\dps{v=\int a\,dt=-\int g\,dt= -g\,t + v_0}$
ただし $v_0$ は $t=0$ での初速度です。さらに $t$ で積分して
$\dps{x(t)=\int v\,dt= -\frac{1}{2}g\,t^2 + v_0\, t + h_0}$
$h_0$ は $t=0$ で落下し始めた高さです。

 初速 $v_0=0$ で落下させると地面に着く時刻は

$\dps{t=\sqrt{\frac{2h_0}{g}}}$
です。そのときの速さは
$\dps{|\,v\,|=g\,t=\sqrt{2h_0\,g}}$
であって、落ち始める高さの平方根に比例することがわかります。 自由落下は物体の質量には依存しません。


パラシュートの落下

 今度はパラシュートの落下を考えましょう。 空気抵抗が与える力は落下速度に比例することがわかっています。 その比例定数を $k$ とおくと、 落下するパラシュートに掛かる力は、重力と合わせて
$f=-mg-kv$
です。これを $(\ast)$ へ入れると
$a=-g-Kv$ ( ただし $\dps{K=\frac{k}{m}}$ )
$x$ で書けば
$x'' = -g -Kx'$
$t$ で積分して
$x' = -g\,t -Kx + C$
この微分方程式を解くには $y=xe^{Kt}$ とおく、というテクニックがありまして、 \begin{equation} y' = x'e^{Kt}+Kxe^{Kt} = e^{Kt}(x'+Kx) = e^{Kt}(-g\,t+C) \end{equation} 右辺の積分は簡単な部分積分で
$\dps{y=\frac{1}{K}e^{Kt}(-g\,t+C)+\frac{g}{K^2}e^{Kt} + D}$
よって適当に定数を置き換えて
$\dps{x(t)=\frac{g}{K}t+A + De^{-Kt}}$
の形となります。

 時刻 $t$ が十分大きければ $e^{-Kt} \mbox{ ≒ } 0$ ですから

$\dps{x \mbox{ ≒ } \frac{g}{K}t+A}$,   $\dps{v = x' \mbox{ ≒ } \frac{g}{K}}$
であって、ほとんど一定の速さで落ちてゆくことがわかります。