数値解析 第13回 (1) 固有値・固有ベクトルの定義
固有値・固有ベクトルの定義
行列の特性を表す固有値・固有ベクトルを今日は勉強します。
Def.1 $n$ 次正方行列 $A$ に対し、
スカラー $\lambda$ と、
$\ooo$ でないベクトル $\vvv$ が
$\dps{A \vvv = \lambda \vvv}$
を満たすとき
- $\lambda$ を「 $A$ の固有値」、
- $\vvv$ を、「固有値 $\lambda$ に対する $A$ の固有ベクトル」
と呼ぶ。
Rem.2 $A$, $\lambda$ が何であっても $A\ooo=\lambda\ooo$ は成り立つので、$\ooo$ は $A$ の特性を表していません。
そのため、固有ベクトルには「$\ooo$ でない」という条件が付いています。
ここ大事!
Rem.3 $\vvv$ が $\lambda$ に対する $A$ の固有ベクトルであれば、
$\vvv$ の $0$ でないスカラー倍
$\www = k \vvv \quad$ ( $k \neq 0$ )
も $\lambda$ に対する $A$ の固有ベクトルになります。
( $\because$ $A \www$ $=A(k\vvv)$ $=kA\vvv$ $=k\lambda\vvv$ $=\lambda(k\vvv)$ $=\lambda\www$ )
すなわち固有ベクトルは「方向が本質」なので、
方向が同じ固有ベクトルは「同じもの」として扱います。
ここも大事!
例
Prop.4 $A$ が対角行列であれば、その固有値は $A$ の対角成分であり、
標準基底ベクトルが固有ベクトルである。
Ex.5 $\dps{A=\mat{rr}{-3 & 0 \\ 0 & 2}}$ のとき
$\dps{\mat{rr}{-3 & 0 \\ 0 & 2}\mat{c}{1 \\ 0}=\mat{c}{-3 \\ 0}=(-3)\mat{c}{1 \\ 0}}$,
$\dps{\mat{rr}{-3 & 0 \\ 0 & 2}\mat{c}{0 \\ 1}=\mat{c}{0 \\ 2}=2\mat{c}{0 \\ 1}}$
ゆえ、固有値は $-3$ と $2$ で、
$-3$ に対する固有ベクトルは $\dps{\mat{c}{1 \\ 0}}$,
$2$ に対する固有ベクトルは $\dps{\mat{c}{0 \\ 1}}$ です。
答えの書き方 慣例として
$\lambda_1=-3,\ \vvv_1=\mat{c}{1 \\ 0}$;
$\lambda_2=2,\ \vvv_2=\mat{c}{0 \\ 1}$
と書けば十分です。
いちいち
$\dps{\vvv_1=\mat{c}{t \\ 0}}$ ( $t$ は $0$ でない任意の実数 )
とか書かなくていいです。また番号は好きに振って構いません。
Ex.6 $\dps{A=\mat{rr}{3 & 1 \\ 1 & 3 }}$ のとき
$\lambda_1=4,\ \vvv_1=\mat{c}{1 \\ 1}$;
$\lambda_2=2,\ \vvv_2=\mat{r}{1 \\ -1}$
$\dps{\mat{rr}{3 & 1 \\ 1 & 3 }\mat{c}{1 \\ 1}=\mat{c}{4 \\ 4}=4\mat{c}{1 \\ 1}}$,
$\dps{\mat{rr}{3 & 1 \\ 1 & 3 }\mat{r}{1 \\ -1}=\mat{r}{2 \\ -2}=2\mat{r}{1 \\ -1}}$
ゆえ。