数値解析 第4回 (3) ラグランジュ補間の誤差評価
線形補間の誤差評価
精度は良くない線形補間ですが、
ラグランジュ補間の誤差評価の感触はこれでつかみましょう。
Th.5 区間 $I=[x_k,\,x_{k+1}]$ における線形補間 $p(x)$ の近似誤差は、$x=\alpha$ で
$\dps{\left|\,p(\alpha) - f(\alpha)\,\right|
\leqq \frac{h^2}{8}\times f''_{max}}$
を満たす。ただし、
$h =$ ( 区間 $I$ の幅 ) = $x_{k+1} - x_k$,
$f''_{max} =$ ( 区間 $I$ における $|\,f''(x)\,|$ の最大値 )
たとえば
$f(x) = \cos(x)$, $h=0.1$
なら
右辺 $\dps{\leqq \frac{0.1^2}{8} \times 1 = \frac{1}{800}}$
となります。
証明 1° まず $p(x)$ の式は
$\dps{p(x)=\lambda (x-x_k)+y_k}$ $\cdots\cdots$ $(1)$
ただし
$\dps{\lambda = \frac{y_{k+1}-y_k}{x_{k+1}-x_k}}$
- 誤差 $p(x)-f(x)$ が最大となるのは微分が $0$ になるときで
$(p(x)-f(x))'= \lambda - f'(x)=0$.
すなわち
$f'(\alpha) = \lambda$ $\cdots\cdots$ $(2)$
となる $\alpha$ での誤差を評価すれば宜しい。
- $x=\alpha + t$ で $f(x)$ をテイラー展開すると、(2) より
\begin{align}
f(\alpha+t) & = f(\alpha)+f'(\alpha)t+\frac{1}{2}f''(\xi)t^2 \\
& = f(\alpha)+\lambda t+\frac{1}{2}f''(\xi)t^2 \\
\end{align}
ただし $\xi$ は区間 $I$ 内の或る値で、これは第2回のテイラー展開と違って「有限テイラー展開」と呼ばれる形です。
- $x=x_k$ を 3° へ代入すると、 $t=x_k-\alpha$ として
$\dps{y_k = f(x_k) = f(\alpha) + \lambda (x_k - \alpha) + \frac{1}{2}f''(\xi)t^2}$
すると (1) より
$\dps{f(\alpha) = y_k + \lambda (\alpha - x_k) - \frac{1}{2}f''(\xi)t^2
= p(\alpha) - \frac{1}{2}f''(\xi)t^2}$
- $\alpha$ が区間 $I$ の中点より左にあれば $|\,t\,|=|\,\alpha-x_k\,| \leqq \frac{h}{2}$ ゆえ、4° より
$\dps{|\,p(\alpha) -f(\alpha)\,|
= \frac{1}{2} |\,f''(\xi)\,|\,t^2
\leqq \frac{1}{2}f''_{max}\left(\frac{h}{2}\right)^2
= \frac{h^2}{8}\times f''_{max}}$
- $\alpha$ が区間 $I$ の中点より右にあるときは 3° へ $x=x_{k+1}$ を代入した式を用いて同様に証明できます。
(証明終)
$m$ 次ラグランジュ補間の誤差評価
2 次以上のラグランジュ補間については結果だけ紹介します。
Th.6 $m$ 次ラグランジュ補間 $p(x)$ の近似誤差は、$x=\alpha$ で
$\dps{\left|\,p(\alpha) - f(\alpha)\,\right|
\leqq \frac{1}{(m+1)!}\times f^{(m+1)}_{max} \times |\,\pi(x)\,|}$
を満たす。ただし
$\pi(x)=(x-x_k)(x-x_{k+1})\cdots(x-x_{k+m})$
で、$f^{(m+1)}_{max}$ は区間 $I$ における $|\,f^{(m+1)}(x)\,|$ の最大値である。
観測点 $x_k$ たちの刻み幅を小さくすれば、
$|\,\pi(x)\,|$ は小さく、
$(m+1)!$ は大きな数なので精度が良くなります。