数値解析 第13回 (7) 付録:線形問題が特性方程式で解ける仕組み
定数係数線形微分方程式 $y''+ay'+by=0$ $\cdots\cdots$ $(\ast)$
これを固有値・固有ベクトルの考え方で解きましょう。
- $(\ast)$ の解は
- 足してもスカラー倍しても解になる
- 2階微分方程式なので、一般解は2個の積分定数を含む
ことから、2次元のベクトル空間 $V$ を成すことがわかります。
- 「微分をする」という写像を
$D:V \rightarrow V$, $D\,y = y'$
と書くことにすれば、$D$ は $V$ の一次変換になります。
- $D$ の固有値・固有ベクトル $\lambda$, $y$ とは
$D\,y = \lambda y$
を満たすスカラーと非零関数 $y$ のことですから、
$0 = y''+ay'+b=D^2y+aDy+by=(\lambda^2+a\lambda+b)y$
が成り立ちます。すなわち $\lambda$ は特性方程式
$\lambda^2+a\lambda+b=0$
の根、すなわち特性根です。
- $\lambda$ に対する固有ベクトルは $D\,y = y'=\lambda y$ の解ですから $y=Ae^{\lambda x}$ です。
- 特性方程式が異なる特性根 $\lambda$, $\mu$ を持つときは、以上の議論から
$y = Ae^{\lambda x}+Be^{\mu x}$
が $(\ast)$ の一般解になります。
行列は表に出てきませんが、定数係数線形微分方程式の解法にはこのように固有値・固有ベクトルの考え方が潜んでいます。
( 特性根が重根のときはもう少し議論が必要ですが。)
線形漸化式 $x_{n+2}+ax_{n+1}+bx_n=0$ $\cdots\cdots$ $(\sharp)$
これも定数係数線形微分方程式と全く同じストーリーで解けます。
- $(\sharp)$ の解は
- 足してもスカラー倍しても解になる
- $x_0$, $x_1$ を決めると解がただ一通りに決まるので、一般式は2個のパラメータを含む
ことから、2次元のベクトル空間 $V$ を成すことがわかります。
- 「番号 $n$ を $1$ 進める」という写像を
$D:V \rightarrow V$, $D\,x_n = x_{n+1}$
と書くことにすれば、$D$ は $V$ の一次変換になります。
- $D$ の固有値・固有ベクトル $\lambda$, $\{\,x_n\,\}$ とは
$D\,x_n = \lambda x_n$
を満たすスカラーと非零数列 $\{\,x_n\,\}$ のことですから、
$0 = x_{n+2}+ax_{n+1}+bx_n = D^2x_n+aDx_n+bx_n=(\lambda^2+a\lambda+b)x_n$
が成り立ちます。すなわち $\lambda$ は特性方程式
$\lambda^2+a\lambda+b=0$
の根、すなわち特性根です。
- $\lambda$ に対する固有ベクトルは $D\,x_n = x_{n+1}=\lambda x_n$ の解ですから等比数列 $x_n=A \lambda^n$ です。
- 特性方程式が異なる特性根 $\lambda$, $\mu$ を持つときは、以上の議論から
$x_n= A \lambda^n + B \mu^n$
が $(\sharp)$ の一般解になります。