数値解析 第1回 (2) 本講義の位置づけ
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ロケットの話
現代では、宇宙へ行く乗り物はロケットである、というのが常識ですが、
ジュール・ヴェルヌの小説「地球から月へ」「月世界へ行く」
に代表されるように、 19世紀には、宇宙へ行ける乗り物は大砲の砲弾である、というのが常識でした。 砲弾なら初速と打ち出し角度で制御ができるのに対し、 「ロケット」にはロケット花火のようなイメージしかなく 「全く制御が効かないもの」と思われていたからです。
南国市のえんこう祭りのロケット花火
(良い子は真似しません)
しかし、ここに「ロケットの父」と呼ばれる人たちが現れます。
ロバート・ゴダード
や
コンスタンチン・ツィオルコフスキー
、
ヘルマン・オーベルト
といった人たちです。 彼らは厳密な計算を行って、宇宙へ飛び出すためには大砲の砲弾では全く推進力が足りず、 多段ロケットが必要であることを示しました。
科学技術を進歩させるためには厳密な計算が必要だ、というお話でした。
参考:
宇宙兄弟 Web 連載「一千億分の八」
数値を計算する、ということ
子供の頃から私たちはたくさんの公式を習い、 厳密な値や、式で答を出すことを求められてきました。 答がちゃんと書けるのは勿論良いことなのでそのように訓練されてきたのですが、 答がちゃんと書けない方が実はフツーなのです。
2次・3次・4次の方程式には根号を用いた解の公式がありますが、 5次以上の方程式にはありません。 みつかっていないのではなく、 「公式が作れないこと」をアーベルやガロアが19世紀に証明しています。
実生活でものを作るためには値が必要です。 たとえ式や記号で書けたとしても数値を知らなければなりません。 例えばギターのフレームは公比 $\sqrt[12]{2}$ の等比数列で刻まれていますが、 $\sqrt[12]{2}$ という記号のままではギターは作れません。
$\sqrt[12]{2} \mbox{ ≒ } 1.059463\cdots$
という近似値が必要です。
本講義の位置づけ
「線形代数」「解析学」「応用数学」等の授業は、答がちゃんと書ける計算を徹底的にやろう、というスタンスです。 これに対し、この「数値解析」や、髙田先生担当の「シミュレーション工学」は、 答がちゃんと書けなくてもコンピュータで何とか近似値を求めよう、という授業です。
「シミュレーション工学」はシミュレーション手法の習得に重点を置き、 「数値解析」では、
それぞれのアルゴリズムを産み出したアイデア
誤差を少なくしたり、計算を高速化するためのアイデア
それらの数学的な裏付け
といったものを学びます。
自分が新しい手法を開発しなければならなくなったときに、 先人たちが何を欲してどう発想したかを、たくさん知っておくことが大切になるからです。
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