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組合せとグラフの理論(塩田)第7回 (2) 2元体 F2

スカラーとは

 ベクトルに対してただの数のことを「スカラー」と呼びます。 線形代数を習い始めたころは実数がスカラーで、 固有値の勉強をする頃になると複素数もスカラーとして使います。

 行列計算をするときに、数として要求されることは何かと考えて次の定義に至ります:

Def.1 加減乗除の四則演算ができる数の集合を「体(たい)」と呼ぶ。
 この観点から、実数の集合は「実数体」、複素数の集合は「複素数体」と呼ばれます。 また、実数をスカラーと考えるベクトルは「実ベクトル」あるいは「実数体上のベクトル」というように呼びます。

2元体 F2

 ここで、情報科学にとって大切な体を導入します。
Def.2 01 の 2 つしか要素を持たない集合に、 次のように加減乗除を定義した体 F2={0,1} を 「2元体」と呼ぶ。
a+b ab a×b a÷b
ab01001110 ab01001110 ab01000101 ab10011
(普通の数と同様、0 では割れません。)
 法演算を知っている人には、mod2 の計算、と言えばわかるでしょうか。
2=0, x=x
と思って計算するのが F2 です。
Rem.3 F2 を使って設計したシステムは
  • 0, 1 はビットそのもの
  • 加法と減法は等しく、それはビットの排他的論理和 XOR になる:
    a+b=ab=a XOR b
  • 乗法はビットの AND になる:
    a×b=a AND b
ですから容易にハードウェア化できて、計算も高速にできるというメリットがあります。