組合せとグラフの理論(塩田)第7回 (3) 演算 $\oplus$

演算 $\oplus$

 では本題に入ります。
Def.4 グラフ $G$ の辺の部分集合 $C$, $D$ に対して
$C \oplus D = C$ XOR $D$
と定める。( XOR は排他的論理和 )
$C \oplus D = (C \cup D) - (C \cap D)$
と書いても同じもので、ベン図では次の色付きの部分です。
 閉路同士でこの $\oplus$ を計算すると面白いことが起こります:
Th.5 $C$, $D$ がともに $G$ の閉路であれば、 $C \oplus D$ はいくつかの閉路を合わせたものになる。 (正確に言うと「閉路の辺集合」と言うべきですが、ルーズにしゃべります。)
証明 部分グラフとして $C \oplus D$ 上の頂点の次数は $2$ か $4$ ですので、 第5回の Th.3 より各連結成分はオイラーグラフであり、 第4回の Prop.3 よりそれは閉路に分割できます。(証明終)
Ex.6 グラフ
$G=$
において
$C=$ $D=$
としたとき、$C \oplus D$ を求めましょう。まず $C$ と $D$ を重ねて描き、
二重辺を消せば出来上がりです:
$C \oplus D=$
Ex.6'  同じ $G$ において、今度は
$C=$ $D=$
とします。まず $C$ と $D$ を重ねて描き、
二重辺を消します。
$C \oplus D=$
これは次のように閉路に分割できます:
$=$ $\oplus$
次のような分け方もできます。答えは一通りとは限りません。
$=$ $\oplus$

演算 $\oplus$ の性質

Th.7($\oplus$ の結合律) 3つの辺集合 $B$, $C$, $D$ について
$B \oplus ( C \oplus D) = (B \oplus C) \oplus D$
証明 $n$ 変数の XOR の真偽値は
  • 奇数個の変数が真 $\Rightarrow$ 真
  • 偶数個の変数が真 $\Rightarrow$ 偽
ゆえ、$\oplus$ の順番には依らない。(証明終) ... ベン図では次の色付きの部分です。

 ここから、$\require{color}\textcolor{red}{\oplus}$ を一種の「加法」だと考える ことにします。すると
Th.8(加法単位元) 空集合 $\textcolor{red}{\emptyset}$ は「ゼロ」の役割を持つ
$C \oplus \emptyset = \emptyset \oplus C = C$, $\quad\forall C$
Th.92倍はゼロ $C \oplus C$ は「 $C$ の2倍」と考えられ、
$2 C = C \oplus C = \emptyset$, $\quad\forall C$
証明 いずれも定義より。