応用数学 第7回 (2) 特殊解の求め方:$R(x)$ が多項式の場合

$R(x)$ が多項式の場合

 キーポイントは
Lemma.1 ( 等比級数の和の公式 ) 
$\dps{\frac{1}{1-X}=1+X+X^2+\cdots}$
これを収束性とかは考えずに使います。
Ex.2 $(D+1)y=x^2$
 L'a 1 に $X=-D$ を代入すると
$\dps{\frac{1}{1+D}=1-D+D^2+O(D^3)}$
ただし $O(D^3)$ は $D^3$ 以上の高次の項を表します。 $\require{color}\textcolor{red}{x^2}$ は 3 回以上微分すると $\textcolor{red}{0}$ になるので $O(D^3)\,x^2=0$ ですから $\require{cancel}$ \begin{align} \dps{y=\frac{1}{1+D}x^2} & = (1-D+D^2+O(D^3))\, x^2 \\ &=x^2 - D\,x^2 + D^2\,x^2 + \cancel{O(D^3)\,x^2}= x^2-2x+2 \\ \end{align} 一応検算しておくと
$y'+y=(x^2-2x+2)'+(x^2-2x+2)=(2x-2)+(x^2-2x+2)=x^2$.

※ 微分方程式が、積分せずに、微分で解けましたね。

Ex.3 $(D^2+D)y=x^2$
 これは $D(D+1)y=x^2$ と表せますので、Ex.2 に続けて $\dps{\frac{1}{D}}$ の公式を使って
$\dps{y=\frac{1}{D}\left(\frac{1}{1+D}x^2\right)=\int(x^2-2x+2)dx=\frac{x^3}{3}-x^2+2x}$.

※ 特殊解をひとつ求めればよいので積分定数は書かなくて構いません。

Ex.4 $(D^2+2D+2)y=x^3$
 これは
$\dps{y= \frac{1}{2+2D+D^2}x^3}=\frac{1}{2}\frac{1}{\left(1+D+\frac{1}{2}D^2\right)}x^3$
と変形すれば L'a 1 が $\dps{X=-\left(D+\frac{1}{2}D^2\right)}$ で適用できます。 ( $\dps{\frac{1}{1-X}}$ の形に持ち込むところがミソです。)   $x^3$ は 4 回以上微分すれば $0$ なので今度は $D^3$ の項まで展開できれば OK です。 \begin{align} \frac{1}{1+D+\frac{1}{2}D^2} &=1-\left(D+\frac{1}{2}D^2\right)+\left(D+\frac{1}{2}D^2\right)^2-\left(D+\frac{1}{2}D^2\right)^3+O(D^4)\\ &=1-D-\frac{1}{2}D^2+D^2+D^3-D^3+O(D^4)\\ &=1-D+\frac{1}{2}D^2+O(D^4)\\ \end{align} よって
$\dps{y=\frac{1}{2}\left(1-D+\frac{1}{2}D^2\right)x^3=\frac{1}{2}(x^3-3x^2+3x).}$

アルゴリズム

Algorithm 5 ( $R(x)$ が多項式の場合 ) 
  1. $f(D)$ から $D$ をくくりだして $f(D)=D^pg(D)$  ( $g(D)$ の定数項 $\neq 0$ ) と表す。
  2. Ex.2, 4 のようにして $g(D)^{-1}R(x)$ を求める。
  3. あとは $p$ 回積分して $\dps{y=\int\cdots\int g(D)^{-1}R(x)\,dx\cdots dx}$.
 次数に注意すると次のことがわかります:
Cor.6 $R(x)$ が $m$ 次多項式ならば $f(D)y=R(x)$ は $\xcancel{\ m\ }$ $m+p$ 次以下の多項式の解をもつ。
従って $R(x)$ が多項式ならば   が多項式で、かつ $f(D)$ の定数項が $0$ でなければ 第4回の未定係数法 が有効です。