応用数学 第6回 (4) 定数係数同次線形微分方程式の解
定数係数同次線形微分方程式の解
$f(X)$ を前ページの通りとするとき、定数係数 $n$ 階同次線形微分方程式
$f(D)\,y=0$ $\cdots\cdots$ $(\ast)$
の解の公式を作ります。
Def.7 $n$ 次方程式
$f(X)=0$
を $(\ast)$ の特性方程式と言い、その根を特性根と言う。
Th.8
- $y=e^{\alpha x}$ が $(\ast)$ の解であること $\Leftrightarrow$ $\alpha$ が特性根であること
- $\alpha$ が特性方程式の $k$ 重根ならば、
$e^{\alpha x}$, $xe^{\alpha x}$, $\cdots$, $x^{k-1}e^{\alpha x}$ は全て $(\ast)$ の解である
- $f(X)$ の全ての根 $\alpha$ について (2) の形の関数を書き出すと、それらはちょうど $n$ 個あり、$(\ast)$ の解空間の基底を成す。
証明 (1)
Th.6 (1) より $f(D)e^{\alpha x}=0$
$\Leftrightarrow$ $f(\alpha)e^{\alpha x}=0$
$\Leftrightarrow$ $f(\alpha)=0$.
- $f(X)=g(X)(X-\alpha)^k$ と書けますので、Th.6 (2) より
$f(D)\{e^{\alpha x}x^j\}=e^{\alpha x}f(D+\alpha)\,x^j=e^{\alpha x}g(D+\alpha)D^k\,x^j.$
$j \lt k$ ならば $D^kx^j=0$ ゆえ右辺は $0$ になります。
- (2) の形の関数が $n$ 個あることは根の重複度を考えればわかります。
それらが一次独立であることは少し長くなるので省略します。( 付録参照 )
Rem.9 特性根が複素数 $\alpha=\lambda + i \mu$ のときは、共役複素数 $\bar\alpha = \lambda-i \mu$ も特性根で、
それらの重複度を $k$ とすると
- $e^{\lambda x}\cos(\mu x)$, $xe^{\lambda x}\cos(\mu x)$, $\cdots$, $x^{k-1}e^{\lambda x}\cos(\mu x)$
- $e^{\lambda x}\sin(\mu x)$, $xe^{\lambda x}\sin(\mu x)$, $\cdots$, $x^{k-1}e^{\lambda x}\sin(\mu x)$
たちが $2k$ 次元分の基底になります。
やってみよう
(1) $y'''-5y''+6y' = 0$
解
$f(D)=D^3-5D^2+6D$ の場合で、特性方程式は
$X^3-5X^2+6X=X(X-2)(X-3)=0$
特性根は $0$, $2$, $3$ ( 全て単根 ) で、一般解は
$y=Ae^{0x}+B\,e^{2x}+C\,e^{3x}=A+B\,e^{2x}+C\,e^{3x}$
(2) $(D-1)^4(D+3)^2\,y = 0$
解
特性根は 4 重根 $1$ と 2 重根 $-3$ なので、一般解は
$y=(A+Bx+Cx^2+Dx^3)\,e^x+(E+Fx)\,e^{-3x}$
(3) $(D^2+4D+13)^2\,y = 0$
解
特性方程式は
$(X^2+4X+13)^2=(X+2+3i)^2(X+2-3i)^2=0$
特性根は $-2\pm 3 i$ ( 共に 2 重根 ) なので、一般解は
\begin{align}
y&=(A+Bx)e^{(-2+3i)x}+(C+Dx)e^{(-2-3i)x} \\
&=(A+Bx)e^{-2x}e^{i(3x)}+(C+Dx)e^{-2x}e^{i(-3x)} \\
&=(A+Bx)e^{-2x}\{\cos(3x)+i\sin(3x)\}+(C+Dx)e^{-2x}\{\cos(-3x)+i\sin(-3x)\} \\
&=e^{-2x}\left\{\big((A+C)+(B+D)x\big)\cos(3x)+i\big((A-C)+(B-D)x\big)\sin(3x)\right\} \\
&=e^{-2x}\{(A'+B'x)\cos(3x)+(C'+D'x)\sin(3x)\} \\
\end{align}