応用数学 第3回 (1) 関数もベクトルである

ベクトルとは

 「ベクトル」には「矢印」や「長さと方向を持つもの」といったイメージがありますが、 その本質は
  1. 足せること
  2. スカラー倍できること
たった2つだけです。 (「スカラー倍」は、初学者はとりあえず「実数倍」のことだと思っていていいです。)
 線形代数ではベクトル空間 ( = 線形空間 ) の公理というのが出てきて何やらややこしそうですが、 このシンプルな約束事を押さえておいてください。

 ベクトルが重宝される理由は
  1. シンプルな約束事なので 色んなものが実はベクトル として扱えること
  2. シンプルな約束事なのに たくさんの定理 が導かれること
  3. その 色んなものたくさんの定理 を適用できること
です。

関数もベクトルである

 関数も、足せて、実数倍ができます:
  1. 和は $f(x)+g(x)$
  2. 実数倍は $c\,f(x)$
ということは 関数もベクトルである と考えることができます。

関数の一次独立性・一次従属性

 関数もベクトルなので、一次独立性・一次従属性が定義されます。
Def.1 関数 $y_1$, $y_2$, $\cdots$, $y_n$ が一次独立である、とは、
$c_1\,y_1+c_2\,y_2+\cdots+c_n\,y_n=0$ ( ゼロ関数 )   $\cdots\cdots$ $(1)$
を満たす定数の組が
$(c_1, c_2,\cdots,c_n)=(0,0,\cdots,0)$
に限ること。
 一次独立の否定、が一次従属です。
Def.1' 関数 $y_1$, $y_2$, $\cdots$, $y_n$ が一次従属である、とは、
$(c_1, c_2,\cdots,c_n) \neq (0,0,\cdots,0)$
となる定数の組があって
$c_1\,y_1+c_2\,y_2+\cdots+c_n\,y_n=0$
が成り立つこと。
 例えば $c_1 \neq 0$ であれば
$y_1=-\frac{1}{c_1}(c_2\,y_2+\cdots+c_n\,y_n)$   $\cdots\cdots$ $(2)$
となって「 $y_1$ が $y_2$, $\cdots$, $y_n$ に一次式の形で従属する」ということです。
一次独立性・一次従属性の基本的な証明パターン は、
  • 一次独立性:$(1)$ から $c_1=c_2=\cdots=c_n=0$ を導く
  • 一次従属性:$(2)$ のような式をひとつみつける
ことです。