応用数学 第1回 (2) 方程式の常識
数の方程式
まず、方程式について次の「常識」をもっておいてください:
Th. 数の連立方程式において
とすると、
フツーは
- $m \lt n$ のときは、条件が多すぎて解が存在しない
- $m=n$ のときは、解は有限個存在する
- $m \gt n$ のときは、$m-n$ 個の任意定数を含む一般解が存在する
ここで「独立でない」というのは、
$\left\{
\begin{array}{ll}
{\small (1)} & x + y + z = 3 \\
{\small (2)} & x + 2y + 3z = 6 \\
{\small (3)} & 2x + 3 y + 4z = 9 \\
\end{array}
\right.$
という3つの条件式では $(1)+(2)=(3)$ が成り立つように、他の式から導かれる式が混ざっている状態のことです。
また、
$\left\{
\begin{array}{l}
x^2 + y^2 = 1 \\
x = 2 \\
\end{array}
\right.$
などは実数の世界では解がありませんが、複素数の世界ではちゃんと2つの解があります。
これは複素数が代数学用語で言う「代数閉体」だからで、
「フツー」というのは「代数閉体で考える」と、という意味で ...
ま、しかし細かいことを言いだすときりがありませんので、
そんなもんだと思っていてください。
常微分方程式
- 一変数の関数の微分しか出てこない微分方程式を「常微分方程式」と言います。
(2変数以上の関数の偏微分が絡む方程式は偏微分方程式と言います。)
- 微分方程式に何階微分までが出てくるかを、その「階数」と言います。
例えば
- $(y')^2 = y$ は1階常微分方程式
- $\dps{\frac{\partial ^2 f}{\partial x^2} + \frac{\partial ^2 f}{\partial y^2} = 0}$ は
2階偏微分方程式
です。
Th. $n$ 階常微分方程式の一般解はフツー $n$ 個の任意定数を含み、
初期条件(時刻 $t=0$ での値など)を与えることによりそれらの任意定数が決まる。
$n$ 階微分が出てくるということは、
$n$ 回積分をしないと解けない、
ということですので、
一般解には積分定数が $n$ 個入ることになります。
Ex. $(y')^2 = y$ の一般解は、任意定数 $C$ を用いて $\dps{y=\left(\frac{x}{2}+C\right)^2}$ と書けます。
これに初期条件
$y(0)=1$
を与えると $C=\pm 1$ となり、
$\dps{y=\left(\frac{x}{2}+1\right)^2}$ または $\dps{y=\left(\frac{x}{2}-1\right)^2}$
という解が得られます。
Def.
- 一般解の任意定数に具体的な値が入った解を「特殊解」と呼ぶ。
- 一般解の形に当てはまらない解を「特異解」と呼ぶ。
Ex.
- $\dps{y=\left(\frac{x}{2}+1\right)^2}$ は $(y')^2 = y$ の特殊解です。
- $y=0$ は $(y')^2 = y$ を満たしますが、
$\dps{y=\left(\frac{x}{2}+C\right)^2}$ の形には当てはまりませんので「特異解」ということになります。
用語が紛らわしいのですが、「形が異なる」方が「特異解」と覚えれば多少は覚え易いかもしれません。