応用数学 第14回 (3) 定数係数2階線形微分方程式再考

$\newcommand{\LT}{\mathscr{L}}$

定数係数2階線形微分方程式をラプラス変換で

  $\dps{ \left\{ \begin{array}{l} ax''+bx'+cx=f(t) \\ x(0)=C_0,\ x'(0)=C_1. \\ \end{array} \right.}$ $\cdots$ $(\ast)$
を例 4.1 (3) と同様にして解いてみます。$X(s)=\LT(x(t))$ とおくと \begin{align} \LT(ax''+bx'+cx) &=a(s^2X-sx(0)-x'(0))+b(sX-x(0))+cX \\ &=a(s^2X-C_0s-C_1)+b(sX-C_0)+cX \\ &=(as^2+bs+c)X-C_0(as+b)-C_1a \\ \end{align} よって $\LT(f)=F$ とおくと
$(s^2+as+b)X=C_0(as+b)+C_1a+F$
となります。さらに $H=as^2+bs+c$ とおくと
$\dps{X=C_0\left(\frac{as+b}{H}\right)+C_1\left(\frac{a}{H}\right)+\left(\frac{1}{H}\right)F}$.
これをラプラス逆変換して
  $\dps{x(t)=C_0\LT^{-1}\left(\frac{as+b}{H}\right) +C_1\LT^{-1}\left(\frac{a}{H}\right)+ \LT^{-1}\left(\frac{1}{H}\right) \ast f(t)}$   $\cdots$ $(\sharp)$

解 $(\sharp)$ の解釈

 前ページの RLC 回路がそうであるように、$(\ast)$ で表されるシステムでは得てして
  • $a$, $b$, $c$ はシステムで決まっている定数
  • $f(t)$ は入力 ( 外力、とも言う )
  • $x(t)$ は出力 ( 応答関数、とも言う )
です。すると
$\dps{x_0(t)=\LT^{-1}\left(\frac{as+b}{H}\right)}$,   $\dps{x_1(t)=\LT^{-1}\left(\frac{a}{H}\right)}$,   $\dps{w(t)=\LT^{-1}\left(\frac{1}{H}\right)}$
は全てシステムによって決まっている関数であり、解 $x(t)$ は
$\dps{x(t)=C_0\,x_0(t)+C_1\,x_1(t)+w(t) \ast f(t)}$.
と書ける
ことになります。そして
  • $x_0(t)$, $x_1(t)$ は補助方程式 ( 右辺 $f(t)=0$ の場合 ) の解の基底である。
  • 初期条件の $C_0=x(0)$, $C_1=x'(0)$ はその結合係数として解に関与する。
  • 外力 $f(t)$ は畳み込みの形で解に関与する。
と解釈することができます。

インパルス応答

 ところで、ディラックのデルタ関数 $\delta(t)$ は次の意味で「畳み込みに関する単位元」と言えます:
Prop.2 任意の関数 $g(t)$ に対して $g(t) \ast \delta(t) = g(t)$.
証明  $\LT(g \ast \delta) = \LT(g) \times \LT(\delta) = \LT(g) \times 1 = \LT(g)$.  よって $g \ast \delta =g$.  (証明終)

 この命題から、外力 $f(t)$ の畳み込みの相手 $\dps{w(t)=\LT^{-1}\left(\frac{1}{H}\right)}$ については 次のことがわかります。
Rem.3 $w(t)$ は、初期条件が $C_0=C_1=0$、外力が $f(t)=\delta(t)$ のときの解である。
 制御工学・電気工学では
  • $H$ をインピーダンス ( 特性関数 )
  • $\dps{\frac{1}{H}}$ を伝達関数
  • $\dps{w(t)=\LT^{-1}\left(\frac{1}{H}\right)}$ をインパルス応答
  • $\delta(t)$ を単位インパルス
などとと呼びます。インパルス応答 $w(t)$ は初期条件にも外力にも依らず、 システムの特性を表す重要な関数で、
  • スピーカーの設計
  • デジタル信号処理
などにも応用されます。 実際のシステムでは単位インパルス $\delta(t)$ に近い短いパルスを入力したときの出力として測定したりします。