応用数学 第11回 (1) フーリエ変換の定義と基本定理

フーリエ変換の発想

 周期 $2\ell$ を持つ"良い"関数は、変数 $\dps{\frac{n\pi x}{\ell}}$ ( $n=0,1,2,\cdots$ ) の $\sin$, $\cos$ の無限和でした。 周期を持たない関数も $\sin$, $\cos$ の無限和にならないだろうか、と考えた人たちがいました。そのとき
  • $\dps{\frac{n\pi }{\ell}}$ を連続なパラメータ $t$ に置き換え、
  • $n$ についての $\sum$ を $t$ による積分に置き換えてはどうかな?
と考えました。

フーリエ変換の定義

Def.1 実数上で定義され、区分的になめらかな、かつ
$\dps{\int_{-\infty}^{\infty}|\,f(x)\,|\,dx \lt +\infty}$
を満たす関数 $f(x)$ に対し、 $$ \hat f(t)=\frac{1}{\sqrt{2\pi}} \int_{-\infty}^{\infty}f(x)e^{-itx}dx \tag{$\ast$} $$ を $f(x)$ の「フーリエ変換」と呼ぶ。
オイラーの公式
$\dps{e^{i\theta}=\cos\theta + i\sin\theta}$
より
$\dps{\hat f(t)=\frac{1}{\sqrt{2\pi}} \int_{-\infty}^{\infty}f(x)\big(\cos(tx)-i\sin(tx)\big)dx}$
です。前回までは $\sin$ と $\cos$ で書いていましたが、オイラーの公式を用いて $\sin$ と $\cos$ を一緒に書いています。

※ $f$ と $\hat f$ は違う変数で書く習慣です。 この講義では $f(x)$ と $\hat f(t)$ で書きます。
Rem.2 $f(x)$ が偶関数ならば $$ \hat f(t)=\sqrt{\frac{2}{\pi}} \int_{0}^{\infty}f(x)\cos(tx)dx $$ $f(x)$ が奇関数ならば $$ \hat f(t)=-i\sqrt{\frac{2}{\pi}} \int_{0}^{\infty}f(x)\sin(tx)dx $$

基本定理

Th.3 $f(x)$ を Def.1 の条件を満たす関数とするとき、
  1. $f(x)$ の連続点では $$ f(x)=\frac{1}{\sqrt{2\pi}} \int_{-\infty}^{\infty}\hat f(t)e^{ixt}dt \tag{$\sharp$} $$ が成り立つ ( フーリエの反転公式 )。この意味で $f(x)$ を「 $\hat f(t)$ のフーリエ逆変換」と呼ぶ。
  2. $f(x)$ の不連続点では
    $(\sharp)$ の右辺 $\dps{=\frac{1}{2}\big(f(x-0)+f(x+0)\big)}$
    が成り立つ。
※ $(\ast)$ と $(\sharp)$ では $e$ の肩の $\pm$ が違うので注意してください。
※ 証明は難しいので省略します。
"良い"関数 $f(x)$ は、 三角関数 $\dps{e^{itx}}$ を 重み $\dps{\frac{1}{\sqrt{2\pi}}\hat f(t)}$ で 「連続的に足し合わせた」ものになる
という内容の定理です。