応用数学 10回 (3) 波動方程式の解法

波動方程式

Def.7 次の形の偏微分方程式を「波動方程式」と呼ぶ: $$c^2\frac{\partial^2 u}{\partial x^2}=\frac{\partial^2 u}{\partial t^2} \tag{6.1} $$
 これは、$x$ 軸上の区間 $0 \leqq x \leqq \ell$ に張られた 弦の変位 $u(x,t)$ が満たす方程式です。
 $(6.1)$ を、
  • 境界条件   $u(0,t)=u(\ell,t)=0$
  • 初期条件   $u(x,0)=f(x)$, $\dps{\frac{\partial u}{\partial t}(x,0)=g(x)}$
のもとで解け ( ただし $f(x)$, $g(x)$ は与えられた関数 ) 。
 境界条件は、弦の両端が $x$ 軸に固定されていることを、 初期条件の $f(x)$, $g(x)$ は時刻 $t=0$ での弦の変位と速度を表します。

Step 1 ( 変数分離解 )

 前ページと同様
$u(x,t)=X(x)T(t)$  ( $X(x)$ は $x$ だけの、$T(t)$ は $t$ だけの関数 )
の形の「変数分離解」を探します。今度は
$\dps{\frac{X''}{X}=\frac{1}{c^2}\frac{T''}{T}}=$ 定数 $(-k)$
となります。境界条件 $X(0)=X(\ell)=0$ から L'a 2 を用いて
$\exists\, n$; $\dps{k=\left(\frac{n\pi}{\ell}\right)^2}$ かつ $\dps{X=A\sin\left(\frac{n\pi x}{\ell}\right)}$
となるところは一緒で、$T$ は
$\dps{T=B\cos\left(\frac{n\pi c t}{\ell}\right)+B'\sin\left(\frac{n\pi c t}{\ell}\right)}$
となります。掛け合わせて
$\dps{U = XT = \sin\left(\frac{n\pi x}{\ell}\right) \left\{C\cos\left(\frac{n\pi c t}{\ell}\right)+D\sin\left(\frac{n\pi c t}{\ell}\right)\right\} }$.

Step 2 ( 重ね合わせの原理 )

 今度も、変数分離解を重ね合わせた
$\dps{u(x,t)=\sum_{n=1}^{\infty} \sin\left(\frac{n\pi x}{\ell}\right) \left\{C_n\cos\left(\frac{n\pi c t}{\ell}\right)+D_n\sin\left(\frac{n\pi c t}{\ell}\right)\right\}}$
が初期条件を満たすように $C_n$, $D_n$ を決めます。 $t=0$ を入れると
$\dps{f(x)=u(x,0)=\sum_{n=1}^{\infty} C_n \sin\left(\frac{n\pi x}{\ell}\right) }$.
また
$\dps{\frac{\partial u}{\partial t}(x,t) =\sum_{n=1}^{\infty} \sin\left(\frac{n\pi x}{\ell}\right) \left(\frac{n\pi c}{\ell}\right)\left\{-C_n\sin\left(\frac{n\pi c t}{\ell}\right) +D_n\cos\left(\frac{n\pi c t}{\ell}\right)\right\}}$
に $t=0$ を入れて
$\dps{g(x)=\frac{\partial u}{\partial t}(x,0) =\sum_{n=1}^{\infty} \left(\frac{n\pi c}{\ell}\right)D_n\sin\left(\frac{n\pi x}{\ell}\right) }$.
$f(x)$、$g(x)$ のフーリエ正弦展開から
$\dps{C_n = \frac{2}{\ell}\int_{0}^{\ell}f(x)\sin\left(\frac{n\pi x}{\ell}\right)dx,}$ $\quad \dps{D_n = \frac{2}{n\pi c}\int_{0}^{\ell}g(x)\sin\left(\frac{n\pi x}{\ell}\right)dx.}$

Ex.8 $\ell=\pi$,  $\dps{ f(x)= \left\{ \begin{array}{ll} x & (\ 0 \leqq x \leqq \displaystyle{\frac{\pi}{2}} \ ) \\ \pi-x & (\ \displaystyle{\frac{\pi}{2}} \leqq x \leqq \pi \ ) \\ \end{array} \right., }$   $g(x)=0$  のとき
 教科書 pp.101-102, 例 3.2 より
$\dps{f(x)=\frac{4}{\pi}\left(\sin(x)-\frac{\sin(3x)}{3^2}+\frac{\sin(5x)}{5^2}-\cdots\right)}$
ですから、
$\dps{u(x,t)=\frac{4}{\pi}\left(\sin(x)\cos(ct) -\frac{\sin(3x)}{3^2}\cos(3ct) +\frac{\sin(5x)}{5^2}\cos(5ct)-\cdots\right)}$
シミュレーションしてみると
三角形の形に弦を引っ張って離すと、台形の形になって低くなってゆき、反対側にまた台形の形で膨らんでゆきます。

ストークスの波動公式

Th.9 ( ストークスの波動公式 ) 「$(6.1)+$ 境界条件 $+$ 初期条件」の解は次のようにも書ける:
$\dps{ u(x,t)=\frac{1}{2}\Big\{f(x-ct)+f(x+ct)\Big\} +\frac{1}{2c}\int_{x-ct}^{x+ct}g(x)dx }$
 証明は教科書 pp.114-115 を見てください。

 Ex.8 では
$\dps{ u(x,t)=\frac{1}{2}\Big\{f(x-ct)+f(x+ct)\Big\} }$
となり、時刻 $t$ での波形は、初期の三角形の波形を左右に $ct$ だけシフトした波形の平均で台形になります。
上のシミュレーションの通りです。