応用数学 第7回 (3) $f(D)$ の公式
$f(D)$ の公式
新しい道具を定義しましたので、公式をたくさん用意しましょう。
Th.4 $f$, $g$ を多項式、$a$, $b$ を定数、$y$, $z$ を $x$ の関数とするとき、
- $D^mD^n=D^{m+n}$, $(D^m)^n=D^{mn}$
- 作用素として $aD=D\,a$
- $f(D)g(D)=g(D)f(D)=(fg)(D)$
- $f(D)(ay+bz)=af(D)\,y+bf(D\,)z$
これらは、多項式の積の定義や微分の線形性などから簡単に導かれます。
たとえば (2) は
$(Da)y=D(ay)=(ay)'=ay'=a(Dy)=(aD)y$
という感じです。
Th.5 ( ライプニッツの公式 )
$\dps{D^n(yz)=\sum_{k=0}^{n}\left(\begin{array}{c}n \\ k\end{array}\right)(D^k y)(D^{n-k} z)}$
ただし $\dps{\left(\begin{array}{c}n \\ k\end{array}\right)=\frac{n!}{k!\,(n-k)!}}$ は二項係数です。
これは「積の $n$ 階微分はパスカルの三角形で書けるよ」という定理で、例えば
$(yz)'' = yz'' + 2y'z'+y''z$,
$(yz)''' = yz''' + 3y'z''+3y''z'+y'''z$
となります。帰納法で示せます。
Th.6 さらに $\alpha$ を定数とすると、
- $f(D)e^{\alpha x}=f(\alpha)e^{\alpha x}$
..... 指数関数に対する $f(D)$ の作用は単なる定数倍になる
- $f(D)\{e^{\alpha x}y\}=e^{\alpha x}f(D+\alpha)\,y$
- $f(D)\{xy\}=xf(D)y+f'(D)y$
証明 Th.4 より、いずれも $f(D)=D^n$ のときに示せば充分です。
(1) は $D^n e^{\alpha x}=\alpha^n e^{\alpha x}$ でおしまいで、(2), (3) は
Th.5 より
\begin{align}
D^n\{e^{\alpha x}y\}
&=\sum_{k=0}^{n}\left(\begin{array}{c}n \\ k\end{array}\right)(D^k e^{\alpha x})(D^{n-k} y) \\
&=\sum_{k=0}^{n}\left(\begin{array}{c}n \\ k\end{array}\right)(\alpha^k e^{\alpha x})(D^{n-k} y) \\
&= e^{\alpha x}\sum_{k=0}^{n}\left(\begin{array}{c}n \\ k\end{array}\right)(\alpha^k)(D^{n-k} y)
= e^{\alpha x}(D+\alpha)^n y, \\
\end{align}
\begin{align}
D^n\{xy\}
&=\sum_{k=0}^{n}\left(\begin{array}{c}n \\ k\end{array}\right)(D^k x)(D^{n-k} y) \\
&=\left(\begin{array}{c}n \\ 0\end{array}\right)(x)(D^{n} y) + \left(\begin{array}{c}n \\ 1\end{array}\right)(D\,x)(D^{n-1} y)
=xD^{n} y + nD^{n-1} y\\
\end{align}
となります。(証明終)