「理工学英語ゼミナールI」「理工学研究プロポーザル」
塩田研究室訪問案内 ― 3. ゼミの研究分野と指導方針 ―

ゼミの研究分野

  1. 塩田研究室では公開鍵暗号の理論からテーマを選ぶことが多いです。 公開鍵暗号とは、公開された暗号化鍵を使って暗号文を作成してもらい、 秘密にしてある復号鍵で復号を行う暗号です。
    暗号化鍵がを教えてしまっているのに、復号は不可能である
    という仕組みを実現するために、整数論、整数アルゴリズム、計算量理論を用います。
  2. かつては、誤り訂正符号や、組合せ論、アルゴリズム的グラフ理論の分野から研究テーマを選んだこともあります。
 過去の卒論題目や卒論のサンプルについては次のページをご覧ください。

ゼミの指導方針

 研究室によっては最先端の研究の一部分を課題として与え研究成果を学会で発表させる所もありますが、 最先端の公開鍵暗号は相当難しいのでそこまでは要求しません。 学部段階では、RSA暗号や楕円曲線暗号などの基本的な暗号の、 暗号設計や暗号解析のプログラムを実際に組んで
仕組みを完全に理解して、本当に使えるものを、自信をもって作る
体験をしてもらっています。

例えばこんな勉強をします

 例えば、現在ごく当たり前に使われている RSA 暗号を実装するとしましょう。
  1. 実用のRSA 暗号では2048ビット(2048桁の2進数)程度の整数 $x$, $e$, $n$ に対して
    $x^e \bmod n$   ( $=x^e$ を $n$ で割った余り )
    の計算をします。 記号で書けば簡単に見えますが、
    • $e$ は10進数で $600$ 桁程度の数です。
    • $x^e$ は10進数で $600 \times 10^{600}$ 桁程度の数です。
    $x^e$ を格納できる記憶媒体などはありませんし、単純に $x$ を 1 回ずつ掛けて
    $x^e=x \times x \times \cdots$
    を計算しようとしたら、どんなに高速なプロセッサを使っても宇宙が終わってしまいます。 そもそも
    • 観測可能な宇宙に存在する原子の個数は $10^{80}$ 個程度(10進数で80桁)
    • 宇宙の年齢は約 $4.35 \times 10^{17}$ 秒(10進数で17桁)
    と言われていますので、600桁というのが如何に大きな数か、って話です。
  2. 上で $n$ と書いた数は、10進数で300桁程度の素数を2つ掛け合わせた数です。 それだけ巨大な数が素数であるかどうかを判定するのに、 2 で割って、3 で割って、5 で割って、... なんてしてたらやはり宇宙が終わってしまいます。
それぞれ、整数論の理論に基づいていろんな工夫をして、高速な計算を実現する方法を学びます。