拡張型心筋症療養記

 2011年8月に拡張型心筋症が発覚。 LVEF 20%, BNP 895 の重篤な心不全状態から8ヶ月で職場復帰致しました。
 ネット検索では極めて生存率の低い病であるかの如く書いた記事が多くヒットしますが、現在では投薬による治療法が進歩し、私のように職場復帰が可能な場合もあります。 私の療養記録が少しでも皆様のご参考になりましたなら幸いです。
プロフィール LVEFの推移 BNP値の推移 経 過 投薬内容 生活上の制限 塩分制限 リンク 公的支援 症状

プロフィール

 

病気のあらまし

 心臓が拡張し、心筋が弱まって、心機能が著しく低下する病気。 心不全に陥り、動悸、激しい息切れ、心臓喘息、むくみなどの症状が現れる。 血流が澱んでできた血栓が飛んで脳梗塞などを引き起こす可能性もある。
 心臓移植以外に完治の方法は知られていないが、 投薬と生活習慣の改善、ストレス回避によって心機能がある程度回復する場合もある。 少なくとも高知県内には私の他にもひとり、 メールを頂いた方数名、 ネット上にも多くの回復例が報告されている(リンク参照)。

お伝えしたいこと

 緊急入院した滋賀病院のネット環境はロビーに置いてあるアナログ回線のパソコンしかなく、 そこで読めるネット上の記事はことごとく、
  • 心臓移植以外の治療は、進行を遅らせることしかできない
  • 10年生きられる人はほとんどいない
と主張していました。 このまま病院から出られずにただただ衰弱して朽ち果ててゆくのだろうか、 そう思わざるを得ない書き方でした。 しかしそれらはかなり古い情報を安易に貼り付けただけの記事だったらしいのです。 治療法は着実に進歩しています。 豊富な症例をお持ちの国循の先生は穏やかなお顔で回復の可能性を約束してくださいました。 そこからです、病気と向き合えるようになったのは。

 病気と症状は分けて考えた方が宜しいです。 この病気が心臓移植以外に完治できないことは事実ですが、 症状を抑えて心機能を回復させることは「100%不可能」な訳ではありません。 必ず回復するという訳にはいかないのもまた事実ですが、 少なくともネットの記事のように100人が100人ともアウトということはないのです。 本当は回復するかもしれないのに、ネットの記事に打ちひしがれて病気に立ち向かう気力を失っている方が相当な数いらっしゃるのではないでしょうか。

 この病気に限らず、病気に関するネットの記事は得てして「たとえ正しくても良くない」ことがあります。 例えば「3割の人が治ります」と書かれていたら「自分は7割の方に入る」と思うのが患者の心理というものです。 ただでさえ病気で弱気になっている患者の為になっていません。

 わけても生存率というのは、その病気以外の原因で亡くなった人まで勘定に入っていますし、 10年生存率なら10年以上昔の治療法で10年生きられたかどうかを数えただけですから、 最新の治療法の効果は絶対に反映していません。 ネット上の記事にはほとんど「いつの統計であるか」すらも示されておらず、 いたずらに患者の不安を煽っているだけです。 このような数字は患者の眼に触れる場所には置かずに、 お医者さんの間で密かに持っておくべきものではないでしょうか。

 難病情報センターによると、 高知県内の特発性拡張型(うっ血型)心筋症による受給者証所持者は平成26年度末で 101 名です。 そのうち、社会復帰できて、かつ、ネットで情報発信までしている者が少なくとも2人います。2人も、います。 今はまだよい治療法に辿り着いていない人も、どうか諦めることだけはしないでください。

左室駆出率(LVEF)の推移

  • 2011年 8月入院時 20%
  • 2012年 2月29日 26%
  • 2012年 5月23日 43%
  • 2012年 9月 5日 43%
  • 2013年 3月 5日 50%
  • 2013年 9月25日 54%
  • 2014年 4月16日 54%
  • 2014年10月 1日 54%
  • 2015年 9月30日 53%
  • 2016年 9月 7日 52%
  • 2017年 9月27日 53%
  • 心臓の働き具合を測る数値。 大動脈へ血液を送り出す役割の左心室が、容積のうち何%の血液を送り出せているかを、心エコーの画像などから推定する。 正常値は 60~80%。
  • BNP値よりかなり遅れて回復してくるそうですので、決して焦ったり諦めたりなさいませんように。

BNP値の推移

    2011年 8月22日 ........ 社会保険滋賀病院に検査入院
  • 2011年 8月31日 579.1
    2011年 9月27日 ........ 社会保険滋賀病院退院
  • 2011年 9月30日 895.5
  • 2011年10月 3日 716.9
    2011年10月 6日 ........ 国立循環器病研究センター入院
  • 2011年10月11日 320.3
  • 2011年10月17日 184.3
  • 2011年10月20日 167.9
  • 2011年10月24日 157.3
    2011年10月26日 ........ 国立循環器病研究センター退院
  • 2011年11月16日 140.1
  • 2011年12月14日 64.4

  • 2012年 1月11日 41.8
  • 2012年 2月 8日 34.5
  • 2012年 3月 7日 17.4
  • 2012年 3月28日 15.2
    2012年 4月 2日 ........ 職場復帰
  • 2012年 4月25日 14.2
  • 2012年 5月23日 15.6
  • 2012年 6月20日 6.6
  • 2012年 7月18日 8.0
  • 2012年 8月 8日 11.0
  • 2012年 9月 5日 4.1
  • 2012年10月 3日 < 4.0
  • 2012年11月 7日 5.2
  • 2012年12月 5日 4.9
  • 心臓の疲労度を測る数値。心臓が疲労したときに生産されるホルモン、脳性ナトリウム利尿ペプチドの血中濃度を測る。 正常値は 18.4 以下。4.0 未満は測定限界外。

経 過

  • 2011年 6月 定期健康診断。特に異常は指摘されず。
  • 2011年 7月 喘息症状(喘鳴、起坐呼吸)が出て開業医に喘息の薬を処方してもらう。
  • 2011年 8月 激しい息切れ。
  • 2011年 8月22日 実家に帰省中、開業医での診療中に不整脈が認められ、社会保険滋賀病院にて精密検査。即日入院。
    ...  心拍数は常時 120/分 を超える状態。 トイレ以外の移動は要車椅子。 水分制限 1000ml/日。 すぐにアーチスト等の服用開始。
  • 2011年 9月22日 心不全症状や薬疹が治まるのを待ってカテーテル検査。
    ...  心筋組織の分析の結果、特発性拡張型(うっ血型)心筋症と診断される。
  • 2011年 9月27日 社会保険滋賀病院退院。
  • 2011年 9月30日 社会保険滋賀病院の先生からご紹介頂き、国立循環器病研究センターにて外来診察。
    ...  投薬調整のための入院を勧められる。
  • 2011年10月 6日 国立循環器病研究センターに入院。
    ...  やはり別フロアへの移動は禁止。水分制限 1000ml/日。
  • 2011年10月26日 国立循環器病研究センター退院。実家にて自宅療養に入る。
    ...  以後ひと月ごとに国立循環器病研究センターにて外来診察。 文庫本を読むかテレビを眺めるかの生活で、 あとはお年寄りか赤子の如くひたすら眠る。 車で買い物へ出るのが唯一の運動。
  • 2012年 3月18日 帰高。
  • 2012年 3月28日 高知大学医学部附属病院に転院。
  • 2012年 4月 2日 約8ヶ月の休養ののち、職場復帰。
    ...  講義は昨年度より半期ものを1科目軽減してもらい、学部・部門の会議は免除されたものの、コース内の業務は通常通り。
  • 2012年 6-12月 大学構内に乱立した一時停止ブロックを撤去させるため奔走。
  • 2012年 8月 定期試験、成績処理、オープンキャンパス、大学院入試、高校生対象のイベント等で心身休まらず。
  • 2012年 9月 5日 エコー検査。心臓の大きさが正常値の範囲に戻るものの、LVEF の回復がみられず不安。
  • 2012年10月 学生4名でゼミ指導再開。
  • 2013年 2月 成績処理、発表会、入試等で多忙。
  • 2013年 3月 5日 エコー検査。LVEF が上昇し、程度としては中症と軽症の境目くらいまで回復。
  • 2013年 3月 本ページ開設。
  • 2013年 5月 復職後はじめて実家まで長距離運転。
  • 2013年 8月 西土佐で41.0℃を記録する猛暑。
  • 2013年12月25日 軽いジョッギング程度の運動が許可される。血液検査も2ヶ月に一度に。
  • 2014年 4月 休職以前の担当科目数に戻る。
  • 2014年 4月16日 エコー検査の結果、血栓のできる心配が無くなりワーファリンは服用中止に。
  • 2014年 5月末 強烈な腰痛。この頃より、いやもっと前からか、肩、手首、薬指、膝、足首など、関節の痛みが体中を旅行している感じ。アレルギー?、何かの副作用?、単に歳の所為?
  • 2015年 2月末~3月上旬 復職後初めて本格的な風邪。38.8℃の熱に激しい下痢、発熱時は心拍数が120から下がらず。しかし心臓へのダメージは少なかった模様。
  • 2015年 9月30日 1年振りのエコー検査。とりあえず正常下限を維持。
  • 2015年12月 この年2回目の風邪。半月以上治らず。理工学部への改組に伴い大量の書類作成に追われた疲れが原因。
  • 2016年 6-7月 風邪。
  • 2016年 9月 エコー検査と心電図。エコー画像は1年前と大差無いものの、心電図を2012年と比べると、ほとんど無きに等しかった t 波が復活し健康な心電図になる。
  • 2016年 9-10月 風邪で2週間ほど咳が抜けず。
  • 2017年 3月 激しい胃腸風邪。入試で休めなかった土日に続いて、単位の足りない学生の為の集中講義が体力を奪い去ったため。
  • 2017年 3-4月 理工学部への改組の為、情報科学教室のホームページを大幅に更新。

投薬内容

  • アーチスト(β遮断薬) 20mg/日
  • ピモベンダン/アカルディ(強心薬)は回復が進んできたので2012年9月に打ち切り。
  • ワーファリン(抗凝固剤)も2014年4月に打ち切り。
  • 2012年7月よりニューロタン(降圧薬)を追加。当初は 25mg/日、2013年3月より 50mg/日。
  • その他、バイアスピリン(抗血小板剤)、アルダクトン(降圧利尿剤)etc.

    詳細を見る( Excel ドキュメント / pdf ドキュメント ) ... あくまで私の場合です。

  • なきさんや私は
    • 当初はβ遮断薬と強心剤を併用し、心臓を「休ませつつ励ます」
    • β遮断薬を飲み続けてゆっくりと心筋の回復を待つ
    という投薬パターンで心不全から回復しました。 薬との相性は人それぞれで、例えばなきさんは、β遮断薬はあまり体に合わず、強心剤を飲み続けなければならないようです
  • 強心剤の長期投与による予後の安全性は確立されていないことから、 「BNP 値が下がったら強心剤は打ち切る」 ことを推奨する意見も少なくありません。

生活上の制限・生活習慣

  • 塩分制限:6g/日。
  • 水分制限:1500ml/日 。ただし大量に発汗した日はこれより多めに摂取。
  • アルコール類:大ジョッキ5杯+チューハイ5杯くらい平気な体だったが、完全に止めた
  • 煙草:生まれてからただの1本も吸ったことがない。
  • 運動:発病以前はランニングなどをしていたが、負荷の掛かる運動は一切禁止された。現在は軽いジョッギング程度の運動は許可されている。
  • 運転:復職後永らく長距離運転は控えていて、2013年5月の連休に初めて帰省。
  • 入浴:2012年10月までは半身浴しか許されなかった。現在は解除。
  • 写真撮影:2012年5月より徐々に再開。
  • 血圧、体重、体温を毎日計測。
  • インフルエンザは命取りになるので、予防接種等を忘れずに。

塩分制限覚え書き

公的支援

  • 「特発性拡張型(うっ血型)心筋症」の診断が降りると、 特定医療費(指定難病)助成制度により医療費の補助が得られる:
    • 自己負担率の軽減(3割の人は2割に)
    • 難病にかかわる医療費のひと月の合計額が一定の上限を超える分は免除 (上限額は各自治体ごとに納税額などで決まる。)
  • 認定を受けられた方は忘れずに病院・薬局で受給者証を提示なさってください。 私は制度を理解していなくて後で返還手続きをすることになりました。
  • 申請書類は字が細かく「ここ大事」とも強調していないので、 難病で苦しんでいる人間が理解して手続きするにはしんどい代物でした。 今は改善されているのかな。
  • 生活上様々な制限があるうちなら身体障害者の認定を受けることも可能。(私は申請しないうちに社会復帰できました。)

こんな症状がありました

この中のいくつかが思い当たる方はどうぞ専門医の判断を仰いでください:
  • 頻脈 ... 安静時でも120回/分以上
  • 喘息症状(心臓喘息と呼びます)
    • 喘鳴 = ゼーゼーとかヒューヒューとか
    • 起坐呼吸 = 寝ていると酸素が足りず、坐るとましになる状態
      ... 起坐呼吸になったら救急車を呼んだ方がいいです。 俄かに喘息症状が出始めた人は素人判断で普通の喘息だと決め付けないでください。
  • しゃがんでいると脚がだるくて仕方ない
  • ジョギングを始めると脚がだるくて続けていられない
  • 下を向くのが辛くて、靴を履いたり靴下を履いたりするのが難儀する
  • 夜中に頻繁にお手洗いに立ち大量にお小水が出る
  • 就寝中に大きな叫び声を上げる
  • 動悸
  • 大量の発汗

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