通信、画像、音声のどの分野でも「デジタルは正確」、「デジタルは美し い」と言われます。 通信情報、画像情報、音声情報などはもともと連続的な数値(アナログ) ですが、これらを0と1のみから成る信号(デジタル信号)に変換するこ とを『符号化』と言います。 0と1の信号に多少のノイズ(雑音)が入って受信されても、それが「0 であったか1であったか」だけを判定すればよいので、デジタル信号はノ イズに強いと言えます。
しかし、惑星探査機から遥か彼方の惑星の画像情報を受信しようとすると、 宇宙空間のさまざまなノイズが入ってしまいます。また、レーザーディス クやコンパクトディスクも埃やキズが原因で大きなノイズが入ることがあ ります。にも拘わらず、惑星探査機やレーザーディスクの映像は鮮明です し、コンパクトディスクの音は雑音が全くないように聞こえます。これは、 『誤り訂正符号』というテクニックのお陰なのです。
符号化の段階で、情報を表す『情報ビット』の他に、『検査ビット』と呼 ばれる「おまけの情報」を付けておき、そのおまけの効果によって誤りを 自動的に訂正しようというのが誤り訂正符号の考え方です。 例えば『ハミング符号』という符号では、4ビットの情報ビット毎に3ビ ットの検査ビットを付けることにより、合計7ビット中1ビットの誤りを 自動的に訂正することができます。
理想的な誤り訂正符号の条件としては次の様なことが挙げられます。
最近は、有限個の数しか持たない『有限体』という数体系の上で幾何学図 形を考え、その図形の性質を利用して能力の高い誤り訂正符号を構成する 『代数幾何符号』の研究が盛んに行なわれています。 この様に数学の深い知識を用いると能力の高い符号を作ることができます。