数値解析 第1回 (3) 誤差と精度

 コンピュータを用いて計算した数値には、 様々な原因によって誤差が忍び込みます。 今日の後半はそのお話です。

絶対誤差と相対誤差

 まず、誤差には、絶対誤差と相対誤差とがあります。
Def. 理論値 $\alpha$ と、その近似値 $x$ に対して
  • $|\,x-\alpha\,|$ を $x$ の絶対誤差
  • $|\,(x-\alpha)/\alpha\,|$ を $x$ の相対誤差
と呼ぶ。
  • 絶対誤差は 単に数値の差を表しただけ ですので、 「絶対誤差が $0.01$ 程度である」と言っても 理論値が $10000$ 程度の値のときには相当正確な近似値であると言えますが、 理論値が $1$ 程度なら大した精度とは言えません。
  • これに対し、相対誤差は、理論値に対する「値のずれの比率」を表していますので 正確に精度を表現している と言えます。
  • ただし悩ましいことに 数値計算は理論値がわからないから行うのであって、数値計算の際には相対誤差が使えないことも少なくありません。

有効数字

 精度を表すもうひとつの目安に有効数字があります。
Rem. 有効数字 $k$ 桁で表された数値の相対誤差は最大でおおよそ $5.0\times 10^{-k}$.
  • 例えば有効数字3桁の値 $x=1.00$ は
    $0.995 \leqq x \lt 1.005$
    の範囲にある、ということですので、相対誤差は最大で
    $0.005 / 0.995 \mbox{ ≒ } 5 \times 10^{-3}$
    となります。
  • 同じ有効数字3桁でも $x=9.99$ の場合は
    $9.985 \leqq x \lt 9.995$
    の範囲にありますので、相対誤差は最大でも
    $0.005 / 9.985 \mbox{ ≒ } 5 \times 10^{-4}$
    です。
  • 上位の桁の数字によってあり得る最大の相対誤差が微妙に違いますが、 有効数字の桁数は一応の精度の目安になります。