数値解析 第10回 (3) 連立一次方程式と行基本変形
消去の手順
Ex.4 の連立一次方程式を、機械的に $x$, $y$ の順に未知数を消去して解くには次のようにします:
- 初期状態:
$\dps{\left\{
\begin{array}{l}
\phantom{xxxx}\phantom{1}y - \phantom{1}z = -1 \\
2x -6y + 4z = \phantom{w}2 \\
3x + \phantom{1}y - \phantom{1}z = \phantom{w}2 \\
\end{array}
\right.}$
- $x$ の入った式を第1式とするため、第1式と第2式を入れ替える:
$\dps{\left\{
\begin{array}{l}
2x -6y + 4z = \phantom{w}2 \\
\phantom{xxxx}\phantom{1}y - \phantom{1}z = -1 \\
3x + \phantom{1}y - \phantom{1}z = \phantom{w}2 \\
\end{array}
\right.}$
- 第1式の $x$ の係数が $1$ になるように第1式を $\frac{1}{2}$ 倍する:
$\dps{\left\{
\begin{array}{l}
\phantom{1}x -3y + 2z = \phantom{w}1 \\
\phantom{xxxx}\phantom{1}y - \phantom{1}z = -1 \\
3x + \phantom{1}y - \phantom{1}z = \phantom{w}2 \\
\end{array}
\right.}$
- 第3式から第1式の $3$ 倍を引いて第3式の $x$ を消去する:
$\dps{\left\{
\begin{array}{l}
\phantom{1}x -3y + 2z = \phantom{w}1 \\
\phantom{xxxx}\phantom{1}y - \phantom{1}z = -1 \\
\phantom{wx1}10y - 7z = -1 \\
\end{array}
\right.}$
- 第3式から第2式の $10$ 倍を引いて第3式の $y$ を消去する:
$\dps{\left\{
\begin{array}{l}
\phantom{1}x -3y + 2z = \phantom{w}1 \\
\phantom{xxxx}\phantom{1}y - \phantom{1}z = -1 \\
\phantom{x-3y+2}3z = \phantom{w}9 \\
\end{array}
\right.}$
すると第3式から $z=3$ が求まり、それを第2式に入れて $y=2$ が求まり、
さらにそれらを第1式に入れて $x=1$ が求まります。
行列による表現
これをコンピュータにやらせようとすると、式のままでは大変ですから、拡大係数行列を2次元配列に格納して計算します。
上の手順で係数だけを書き出すと次のようになります。
- 初期状態:
$\dps{
\mat{rrrr}{
0 & 1 & -1 & -1\\
2 & -6 & 4 & 2 \\
3 & 1 & -1 & 2 \\}
}$
- 第1行と第2行を入れ替える:
$\dps{
\mat{rrrr}{
2 & -6 & 4 & 2 \\
0 & 1 & -1 & -1\\
3 & 1 & -1 & 2 \\}
}$
- 第1行を $\frac{1}{2}$ 倍する:
$\dps{
\mat{rrrr}{
1 & -3 & 2 & 1 \\
0 & 1 & -1 & -1\\
3 & 1 & -1 & 2 \\}
}$
- 第3行から第1行の $3$ 倍を引く:
$\dps{
\mat{rrrr}{
1 & -3 & 2 & 1 \\
0 & 1 & -1 & -1\\
0 & 10 & -7 & -1 \\}
}$
- 第3行から第2行の $10$ 倍を引く:
$\dps{
\mat{rrrr}{
1 & -3 & 2 & 1 \\
0 & 1 & -1 & -1\\
0 & 0 & 3 & 9 \\}
}$
となります。やっていることは1ページ目で述べた行基本変形です。
これを次のページでアルゴリズムの形に述べます。