タイムマシン   ― 塩田研一覚書帳 ―

 地球と太陽の距離は平均で約 15,000万 km。本当は地球の軌道は楕円ですが円だと思って概算すると、地球の公転速度(秒速)は
(2 × 3.14 × 150,000,000) / (365 × 24 × 60 × 60) = 約 30 km/s
になります。 とんでもない速さです。 もしタイムマシンが存在して1日前の「ここ」に戻ろうと思うと、そこは
(2 × 3.14 × 150,000,000) / 365 = 約 2,600,000 km = 約 2,600,000,000 m
も離れた場所になります。 たとえ 10-7% の誤差しか許さないマシンが設計ができたとしても、着地点は最大で 2.6m もずれる可能性があります。

 恐ろしいですね。 地面ぴったりに着地しようと思ったのに地中に埋まってしまったり、 天井に体がめり込んだりしてしまいます。 いえたとえ地面ぴったりに着地できたとしても、そこに存在していた空気はどこへ行ってしまうんでしょう。

 それならば、受信側のタイムマシンの中は真空にしておいて送信側の空気ごと運んでしまい、 受信側のタイムマシンで位置がずれないように制御して再現すればいいんじゃないか、 と思うかもしれません。 しかし、です。 複数の時間から同じ時間へタイムワープするとぶつかってしまいすから、 先客がマシン内にいるときは送信を受け付けない、という仕組みは絶対必要です。 ところが、時間の前後関係を無視するマシンを作る為に「先客」という概念を使うというのは自己矛盾になります。

 太陽系も銀河系の中を高速に移動していますし、 そもそも宇宙に絶対的な座標がある訳でもありませんので、 1日前の「ここ」がどれだけ離れた場所か、という議論自体がおかしいのかもしれません。 素粒子ならいざしらず、生身の人間のような巨大な複合体は所詮連続的な運動しかできず、時間を遡ることなどできないと思うのですが。

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