『お引っ越し』の撮影隊が来てエライ目に遇った話

 相米監督の『お引っ越し』は業界での評判は良かったと聞きますが、 あそこに登場する全ての場所と全ての祭りを知っている身としては、 どうにもケッタイで観てられまへん。 まあ所詮作り物ですから、それはいいんですけどね。

 お盆。その村では数え15歳の男の子は 「あがり松明」 という直径2mもの大松明を作ってもらって、 村中の人からお祝いをしてもらいます。

 夜の闇の中、山の頂上から村まで男の子達が松明を担いで火を降ろして来ます。 それは村の広場から見ていると、まるで山から精霊が降りてくるようです。 火を移したあがり松明を広場に運び込み、 大人の人達は火の粉を浴びながら松明を支え続けます。 松明の燃え盛る音、 松明をあおぐ大団扇、 舞い落ちる火の粉、 浴びせられる水、 鳴り続ける鉦・太鼓 ...

 ところが、哲っちゃんが「あがり」の年は、 どこから聞き付けたのか『お引っ越し』の撮影隊が来てしまいました。 畔道を掘り返して電線を張り巡らせる。 山も広場も電灯で煌々と照らし出す。 そのくせ、村人にも私達にも「ストロボを焚くな」と命令する。 松明の周りを我がもの顔で走り回る。 子供達を芝居に狩り出す。

 何よりも失礼なのは、哲っちゃんに対して

 「君チビやなあ」

と言った相米監督。 悪気は無いんだろうけど 言葉は選んで欲しいなぁ。

参考文献:相米監督の『お引っ越し』
『お引っ越し』主人公の行動の真実:

 8月16日に京都の大文字五山送り火を観たあと数日たって、 京都市から列車の予約を取って大津市のホテルに泊まりに行きます  ―― 県庁所在地ながら大津市は京都市に隣接していて、 JRの各駅停車で駅4つ、わずか17分の旅なのですが ――。 8月17日に瀬田川の船渡御を観ているうちに山に迷い込んで、 出て来たのはそこから50kmも離れた村の8月15日の松明祭り。 再び山に迷い込むと今度は湖へ現われるのですが、 村から湖へは20km以上はある筈。 ウーン、レンコは時を駆ける少女なのか...

民俗の小部屋 / 塩田研一のホームページへ