雨乞い踊りで本当に雨が降る村の話
滋賀県の面積の6分の1を占める琵琶湖。
滋賀県は水に恵まれていると思われがちですが、
全ての水が琵琶湖に流れ込んでしまうために
平野部で水を確保することは簡単ではありません。
近江に春祭が多い理由のひとつは
農繁期を前にして水利権の確認をすることにあるようですし、
雨乞いの伝説・祭りは県下全域に広く分布しています。
犬上郡甲良町北落の「おはな踊り」も雨乞い踊りのひとつです。
鈴ケ岳の御池の龍神に病を治してもらった村娘おはなは、
その御礼に一生独身でいることを誓いました。
しかし、いつしか誓いを忘れて嫁に行き、
龍神の怒りに触れて命を絶たれてしまいます。
死に臨んでおはなは
「私は鈴ケ岳の神になるので、干魃の時は訪ねてください」
と言い残しました。
以後鈴ケ岳で雨乞いをすると不思議に慈雨に恵まれたといいます...
日がとっぷりと落ちた頃、村人は手に手に花を持ち神社に集まります。
おはな堂にその花を手向けお参りをして、
やがておはな踊りが始まります。
浴衣姿の子供達は小豆を入れた綾竹を振って輪になって踊り、
輪の中ではホロを背負った青年が太鼓を打ち鳴らして踊ります。
太鼓の音は雷鳴を、綾竹の音は雨を表すのでしょうか。
ひと踊り済んで休憩に入ると突然の雨。
その日は一日良いお天気で、夕立が降るにしては遅すぎる時間です。
「毎年、おはな踊りをすると降るんじゃ。」
事もなげに語る村人。2回目の踊りが始まるとぴたりと雨は止むのです。
参考文献:祭礼事典 滋賀県(桜楓社)、1991.
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