組合せとグラフの理論(塩田)第3回 (3) グラフの演算

(1) 和

 単に並べて描くことです。記号は $\cup$ を用います。
  
$C_3 \cup C_4$

(2) 頂点の除去

 グラフ $G$ から頂点 $v$ を除去したグラフを $G-v$ と表します。
$\longrightarrow$
$G$ $G-v$
注意 消した頂点の接続辺も全て消します。
こういうのはダメ   

(3) 辺の除去

 グラフ $G$ から辺 $e$ を除去したグラフを $G-e$ と表します。
$\longrightarrow$
$G$ $G-e$
注意 こちらは、孤立点ができても、それを消してはいけません。
$\longrightarrow$
$G$ $G-e$
コンピュータネットワークで言えば、$u$ はケーブルを切られて困っているコンピュータ、ということになります。 困っている人を切り捨ててはいけない、という感じですね。

(4) 辺の縮約

 少し複雑な操作ですが、とても役に立つ演算ですので覚えてください。

 グラフ $G$ から辺 $e=uv$ を縮約したグラフを $G \backslash e$ と表し、 次の操作で定義します:
  1. $e$ を除去します。
  2. $u$ と $v$ を重ねて描きます。
$\longrightarrow$ $\longrightarrow$
$G$ $G \backslash e$
 辺 $e=uv$ を 1 点につぶすイメージです。
注意 縮約により多重辺が生じることがありますが、普通はそれを 1 本に減らします。(状況にも依りますが。)
$\longrightarrow$ $\longrightarrow$
$G$ $G \backslash e$

(5) 複数の頂点の除去、辺の除去、辺の縮約

 $G-\{\,u,v,w\,\}$,  $G-\{\,e,f,g\,\}$,  $G\backslash\{\,e,f,g\,\}$ のように表します。 また、頂点の部分集合 $W=\{\,u,v,w\,\}$ を用いて $G-W$ というような書き方もします。
Rem.2 除去・縮約は
  • 帰納法による証明
  • 再帰的アルゴリズム
で活躍します。頂点や辺が減ることで、帰納法の仮定が使えたり、再帰的アルゴリズムが有限の深さで終了する、という仕組みです。 詳しくは後日。

(6) 補グラフ

 単純グラフ $G$ に対し、 頂点の「 隣接する / しない 」関係を逆転させたグラフを $G$ の補グラフと呼び、$\overline{G}$ と表します。
$\longrightarrow$
$C_4$ $\overline{C_4}$
 $K_4$ から $C_4$ の辺を全て除去したグラフが $\overline{C_4}$ になるイメージです。
Ex.3 $\overline{C_5}$ は $C_5$ と同型になる。( $C_5$ は自己補対である、と言います。)
これは次のように頂点番号を振るとわかります。
$\longrightarrow$ $\cong$
$C_5$ $\overline{C_5}$ $C_5$
Prop.4 補グラフの補グラフ $\overline{\left(\overline{G}\right)}$ は $G$ と同型になる。
証明 隣接関係を2回逆転させるので元へ戻るから。(証明終)
ここ大事! $\overline{P_n}$ や $\overline{K_{m,n}}$ を描くときは、頂点を一直線に並べない方が良い。
$P_4$ を真っ直ぐ描くと $\overline{P_4}$ の辺が描きにくいですが:
$\longrightarrow$
$P_4$ の頂点をずらして描いておけばこうなります:
$\longrightarrow$
 $\overline{K_{3,3}}$ を描いてみましょう。