応用数学 第10回 (1) いくつかの準備
周期 2ℓ の場合
前回は
周期 2π を持つ関数のフーリエ展開を扱いました。
一般に
周期 2ℓ を持つ関数については、変数を
ℓπ 倍して定理を読みかえます。
Th.1 周期 2ℓ を持つ、区分的になめらかな関数 f(x) はフーリエ展開
f(x)=a02+∞∑n=1{ancos(nπxℓ)+bnsin(nπxℓ)}
を持ち、そのフーリエ係数は
{an=1ℓ∫ℓ−ℓf(x)cos(nπxℓ)dx∀n≧0bn=1ℓ∫ℓ−ℓf(x)sin(nπxℓ)dx∀n≧1
によって定まる。
12月17日追記 上記の
an,
bn は、
- f(x) が偶関数 ( f(−x)=f(x) ) のときは
{an=2ℓ∫ℓ0f(x)cos(nπxℓ)dx∀n≧0bn=0∀n≧1
- f(x) が奇関数 ( f(−x)=−f(x) ) のときは
{an=0∀n≧0bn=2ℓ∫ℓ0f(x)sin(nπxℓ)dx∀n≧1
フーリエ余弦級数
区間 0≦x≦ℓ だけで定義されている 関数
f(x) があるとき、
区間
−ℓ<x<0 での値を
f(x)=f(−x)
と定義し、さらにこれを周期
2ℓ を持つように全ての
x に拡張すると、周期
2ℓ の
偶関数 が得られます。
⟶
そのフーリエ展開は
cos だけで表されますので
Th.2 区間 0≦x≦ℓ で定義されている、区分的になめらかな関数 f(x) は、フーリエ係数
an=2ℓ∫ℓ0f(x)cos(nπxℓ)dx ( n≧0 )
を用いて
f(x)=a02+∞∑n=1ancos(nπxℓ)
( 0≦x≦ℓ, x は連続点 )
と表される。これを f(x) のフーリエ余弦級数 ( フーリエ余弦展開 ) と呼ぶ。
フーリエ正弦級数
同様に区間
−ℓ<x<0 での値を
f(x)=−f(−x)
と定義し、さらにこれを周期
2ℓ を持つように全ての
x に拡張すると、今度は周期
2ℓ の
奇関数 が得られます ( 不連続点以外で ) 。
⟶
Th.2' 区間 0≦x≦ℓ で定義されている、区分的になめらかな関数 f(x) は、フーリエ係数
bn=2ℓ∫ℓ0f(x)sin(nπxℓ)dx ( n≧1 )
を用いて
f(x)=∞∑n=1bnsin(nπxℓ)
( 0≦x≦ℓ, x は連続点 )
と表される。これを f(x) のフーリエ正弦級数 ( フーリエ正弦展開 ) と呼ぶ。
※ 区間
0≦x≦ℓ で定義されている関数を
強引に周期 2ℓ に拡張します ので、
−ℓ<x<0 での値の決め方には無限の自由度があり、
同じ関数でも cos だけで書いたり sin だけで書いたりできる、ということになります。
補題
もうひとつ補題を述べます。
Lemma 3 k を定数とし、2 階微分方程式
{y″(x)+ky(x)=0( 0≦x≦ℓ )y(0)=y(ℓ)=0
を考える。このとき、
- (6.11) が y≡0 以外の解を持つこと
⇔ k>0 かつ ∃ 自然数 n
such that √k=nπℓ
- (1) のとき、(6.11) の一般解は
y(x)=Asin(nπxℓ)
証明 第4回 Th.2 より
y″+ky=0 の一般解は
- k>0 のとき y=Asin(λx)+Bcos(λx), λ=√k
- k<0 のとき y=Aeλx+Beλx, λ=√−k
- k=0 のとき y=Ax+B
です。このうち
y≢0 で境界条件
y(0)=y(ℓ)=0 を満たし得るのは i の
y=Asin(λx)+0cos(λx) かつ sin(λℓ)=0
のときのみで、第2式から
√k=λ=nπℓ, ∃ 自然数 n
となります。(証明終)
※ (6.11) の微分方程式は、例えば、
- 長さ ℓ の区間に、両端を固定された弦が張られていて、
- 座標 x での変位 y=y(x) が、y に比例した加速度 y″=−ky で運動している状態
を表しています。