応用数学 第9回 (5) パーセバルの等式

パーセバルの等式

 フーリエ展開から級数和を求める道具として有名なのがパーセバルの等式です。
Th.14 周期 $2\pi$ を持つ関数 $f(x)$ が連続、かつ、区分的になめらかであるとする。 そのフーリエ展開可能を $(\sharp)$ とするとき、
$\dps{\frac{1}{\pi}\int_{-\pi}^{\pi}f^2dx = \frac{{a_0}^2}{2}+\sum_{n=1}^{\infty}\left({a_n\!}^2+{b_n\!}^2\right)}$
が成り立つ。
$\newcommand{\ip}[2]{\langle\,#1,#2\,\rangle}$  厳密には収束性を示さなければなりませんが、内積の双線形性と Th.4 より \begin{align} \frac{1}{\pi} & \int_{-\pi}^{\pi}f^2dx = \frac{1}{\pi}\ip{f}{f} \\ &= \frac{1}{\pi}\left(\left(\frac{a_0}{2}\right)^2\ip{1}{1} +\sum_{n=1}^{\infty} \left({a_n\!}^2\ip{\cos(nx)}{\cos(nx)}+{b_n\!}^2\ip{\sin(nx)}{\sin(nx)} \right)\right) \\ &= \frac{1}{\pi}\left(\left(\frac{a_0}{2}\right)^22\pi +\sum_{n=1}^{\infty}\left({a_n\!}^2\pi+{b_n\!}^2\pi \right)\right) = \frac{{a_0}^2}{2}+\sum_{n=1}^{\infty}\left({a_n\!}^2+{b_n\!}^2\right) \\ \end{align}

Ex.10 のフーリエ展開から得られる式は
$\dps{\frac{1}{\pi}\int_{-\pi}^{\pi}f^2dx =\frac{1}{\pi}\int_{-\pi}^{\pi}x^2dx =\frac{2\pi^2}{3}}$
より
$\dps{\frac{2\pi^2}{3} = \sum_{n=1}^{\infty}\left(\frac{2}{n}\right)^2}$
従って
$\dps{1+\frac{1}{2^2}+\frac{1}{3^2}+\cdots=\frac{\pi^2}{6}}$
となって Cor.13 (2) の別証明になっています。
Ex.12 のフーリエ展開から得られる式は
$\dps{\frac{1}{\pi}\int_{-\pi}^{\pi}f^2dx =\frac{2}{\pi}\int_{0}^{\pi}(\pi-x)^2dx =\frac{2\pi^2}{3}}$
より
$\dps{\frac{2\pi^2}{3} = \frac{\pi^2}{2} +\left(\frac{4}{\pi}\right)^2\left(1+\frac{1}{3^4}+\frac{1}{5^4}+\cdots\right)}$
従って
$\dps{1+\frac{1}{3^4}+\frac{1}{5^4}+\cdots=\frac{\pi^4}{96}}$
が言えます。Cor.13 と同様にして
$\dps{1+\frac{1}{2^4}+\frac{1}{3^4}+\cdots=\frac{\pi^4}{90}}$
も示せます。

参考:リーマンのゼータ関数

 複素変数 $s$ に対して
$\dps{\zeta(s)=1+\frac{1}{2^s}+\frac{1}{3^s}+\cdots}$
と定められる関数は「リーマンのゼータ関数」と呼ばれ、
$\dps{\zeta(s)=\prod_{p:\mbox{素数}}\frac{1}{1-p^{-s}}}$
という無限積表示(オイラー積)を持つなど、 素数の情報を全て含む非常に重要な関数です。 その $s=2, 4$ での値には円周率が現れ、そのことがフーリエ展開から証明できる、というのは非常に興味深いことです。 \begin{align} \zeta(2)&=1+\frac{1}{2^2}+\frac{1}{3^2}+\cdots=\frac{\pi^2}{6}, \\ \zeta(4)&=1+\frac{1}{2^4}+\frac{1}{3^4}+\cdots=\frac{\pi^4}{90} \\ \end{align} 未解決の大問題「リーマン予想」もこの $\zeta(s)$ に関する予想です。