応用数学 第3回 (4) 身近なところにある2階線形微分方程式

RLC 回路 ( 教科書 p.70, 例 4.4 )

 2階線形微分方程式は身近なところにある、というお話で、まずは電気回路から。
設定 次の4つを直列につないだ電気回路を考えます:
  1. 抵抗値 $R$ の抵抗
  2. インダクタンス $L$ のコイル
  3. 容量 $C$ のコンデンサ
  4. 起電力 $f(t)$ の電源 ( $t$ は時刻 )
ただし、$R$, $L$, $C$ は定数で、$f(t)$ は時間変化するとします。
 この回路に流れる電流量 $i(t)$ の満たす微分方程式を求めよ。
 ポイントは、各素子がもたらす電圧への影響です。
  1. 抵抗値 $R$ の抵抗は、電流量 $i(t)$ に比例する $R\times i(t)$ の電圧降下をもたらします。
  2. インダクタンス $L$ のコイルは、電流量の変化に比例する $\dps{L \times i'(t)}$ の電圧降下をもたらします。
  3. 容量 $C$ のコンデンサは、コンデンサに蓄えられる電荷量 $q(t)$ に比例する $C\times q(t)$ の電圧降下をもたらします。
各素子のもたらす電圧降下と起電力が釣り合わないといけないので
$\dps{C \, q(t) + R \, i(t) + L \, i'(t) = f(t)}$  $\cdots\cdots$ $(1)$
という式が得られます。 更に、電荷量 $q(t)$ の変化が電流量になりますので、
$i(t)=q'(t)$.
従って $(1)$ を $t$ で微分することにより
$L\,i''+R\,i'+C\,i=f'$
これが $i=i(t)$ の満たす微分方程式で、 定数係数2階線形微分方程式という形になります。

鉛直ばね振り子 ( 教科書 p.26, 例 8.4 )

 次はばねの運動です。
設定 天井から吊り下げられたばねに、空気抵抗の大きな物体が吊り下げられているとします。 物体に掛かる力は次の3つです:
  1. 重力
  2. ばねの力
  3. 空気抵抗
ばねに何も吊るさないときの先端の位置を $x=0$ とし、この物体の時刻 $t$ での位置を $x=x(t)$ とします。
 $x(t)$ の満たす微分方程式を求めよ。
 
  1. 重力は、物体の質量を $m$, 重力加速度を $g$ として $-m\,g$ です。
  2. ばねの力は、何も吊るさないときの位置からの変位に比例します。 比例定数を $k$ として $-k\,x(t)$ と表されます。
  3. 空気抵抗は速度 $x'(t)$ に比例します。比例定数を $R$ として $-R\,x'(t)$ と表されます。
以上を、ニュートンの運動方程式
$F=ma=mx''(t)$
へ入れると
$-mg-kx-Rx'=mx''$
すなわち
$\dps{x''+\frac{R}{m}x'+\frac{k}{m}x=-g}$
やはり定数係数2階線形微分方程式になりました。 なおこれは、$X=x+\frac{mg}{k}$ とおけば
$\dps{X''+\frac{R}{m}X'+\frac{k}{m}X=0}$
となり、定数係数2階線形同次微分方程式に変換できます。