応用数学 第4回 (1) 関数もベクトルである
ベクトルとは
「ベクトル」には「矢印」や「長さと方向を持つもの」といったイメージがありますが、
その本質は
- 足せること
- スカラー倍できること
の
たった2つだけです。
(「スカラー倍」は、初学者はとりあえず「実数倍」のことだと思っていていいです)
線形代数ではベクトル空間 ( = 線形空間 ) の公理というのが出てきて何やらややこしそうですが、
このシンプルな約束事を押さえておいてください。
ベクトルが重宝される理由は
- シンプルな約束事なので色んなものが実はベクトルとして扱えること
- シンプルな約束事なのにたくさんの定理が導かれること
- その色んなものにたくさんの定理を適用できること
です。
関数もベクトルである
関数も、足せて、実数倍ができます:
- 和は $f(x)+g(x)$
- 実数倍は $c\,f(x)$
ということは関数もベクトルと考えることができます。
関数の一次独立性・一次従属性
関数もベクトルなので、一次独立性・一次従属性が定義されます。
Def.1 関数 $y_1$, $y_2$, $\cdots$, $y_n$ が一次独立である、とは、
$c_1\,y_1+c_2\,y_2+\cdots+c_n\,y_n=0$ ( ゼロ関数 ) $\cdots\cdots$ $(1)$
を満たす定数の組が
$(c_1, c_2,\cdots,c_n)=(0,0,\cdots,0)$
に限ること。
一次独立の否定が一次従属で、
Def.1' 関数 $y_1$, $y_2$, $\cdots$, $y_n$ が一次従属である、とは、
$(c_1, c_2,\cdots,c_n) \neq (0,0,\cdots,0)$
となる定数の組があって
$c_1\,y_1+c_2\,y_2+\cdots+c_n\,y_n=0$
が成り立つこと。
例えば $c_1 \neq 0$ であれば
$y_1=-\frac{1}{c_1}(c_2\,y_2+\cdots+c_n\,y_n)$ $\cdots\cdots$ $(2)$
となって「 $y_1$ が $y_2$, $\cdots$, $y_n$ に一次式の形で従属する」ということです。
一次独立性・一次従属性の基本的な証明パターン は、
- 一次独立性:$(1)$ から $c_1=c_2=\cdots=c_n=0$ を導く
- 一次従属性:$(2)$ のような式をひとつみつける
ことです。